AI時代、私たちは本当に自律できているか? ―「会社依存」から「AI依存」へ。依存先が変わっただけではないか

2026.09.11
コラム

ライフワークス 執行役員の佐々木です。

生成AIが急速に仕事の中に入り込んでいます。

情報を調べる。文章を書く。企画を考える。壁打ちをする。場合によっては、自分自身のキャリアについて相談することさえできます。

私自身も、日々AIを使っています。考えを整理したり、自分の仮説をぶつけたり、ときには違和感を言葉にするための相手として、非常に有効だと感じています。

だからこそ最近、ひとつ考えることがあります。

私たちは、AIの登場によって「意思決定と責任」を依存していないだろうか。

かつて、正解は会社が持っていた

日本企業において、かつては会社が個人のキャリアを大きく決めていました。

どこに配属されるのか。何を経験するのか。どのように育成されるのか。どこまで昇進するのか。

会社がある程度の道筋を用意し、その中で成果を上げることが、個人にとっても合理的な時代がありました。

一方で、環境変化が大きくなり、会社が一人ひとりのキャリアの正解を用意し続けることは難しくなりました。

だからこそ、「自分のキャリアは自分で考え、自分で選ぶ」というキャリア自律が求められてきたのだと思います。

ところが、正解を求める相手がAIに変わっていないか

そこに生成AIが登場しました。

分からないことを聞けば、それらしい答えが返ってくる。企画を頼めば、案をつくってくれる。悩みを相談すれば、選択肢を整理してくれる。

非常に便利です。

しかし、ここに少し怖さも感じます。

かつて、

「会社が言うから」
「上司が言うから」

と考えていた人が、

「AIがそう言うから」

に変わっただけだとしたら、それは本当に自律なのでしょうか。

正解を預ける相手が、会社からAIに変わっただけではないか。

私は、この問いを持つ必要があると思っています。

AIは、答えを出してもらう相手ではなく、一緒に考える相手

もちろん、私はAIを否定したいわけではありません。

むしろ使った方がいい。使えるものは徹底的に使えばいいと思っています。

大切なのは、AIとの関係性です。

「このテーマについて考えてください」と依頼し、出てきた答えをそのまま採用する。

それもAI活用です。

一方で、

「私はこう考えている。でも、ここに違和感がある」
「前に考えた内容と重複していないか」
「そもそも、この論点は必要なのだろうか」

と、自分の仮説や違和感をAIにぶつけ、対話しながら考えを深めていく。

これもAI活用です。

使っているAIは同じです。

しかし、後者には自分の問いがあります。

私は、この違いは非常に大きいと思っています。

AI時代、人間に残る価値は何か

AIはこれから、ますます賢くなるでしょう。

知識量では、人間がかなわない領域も増えていく。分析や文章化、選択肢の提示など、多くの仕事をAIが支援してくれるようになります。

では、そのとき人間に残る価値とは何なのでしょうか。

私は、その一つが責任だと考えています。

例えば、AIと一緒に考えた提案をお客様に提示し、結果として失敗したとします。

そのとき、

「契約しているAIがそう言ったので、AIの責任です」

とは言えません。

AIは選択肢を提示できます。

しかし、

何を大切にするのか。
何を選ぶのか。
どこで決断するのか。
そして、その結果を誰が引き受けるのか。

最後にそれを担うのは、人間です。

言い換えれば、

思想を持ち、判断し、決断し、責任を引き受ける。

ここに、AI時代の人間の仕事の価値があるのではないでしょうか。

キャリア自律とは、責任の所在を自分に戻すこと

キャリア自律という言葉は、ときに「自分の好きなことをすること」のように捉えられます。

私は少し違うと考えています。

自分の置かれている環境を理解する。
会社から何を求められているのかを理解する。
市場や社会の変化を見る。
他者と対話する。
AIも使う。

そのうえで、

最後は自分で選ぶ。

そして、自分が選んだことを、自分の人生として引き受ける。

それが自律なのだと思います。

「会社に言われたから、自分には責任がない」

でもなく、

「AIが言ったから、自分には責任がない」

でもない。

自分の人生の意思決定権を、自分の手元に置き続けることです。

会社にも、AIにも、依存しない。でも、一人で生きるわけでもない

自律するということは、会社を必要としないことではありません。

自律した個人が、魅力的な会社を選び、その会社と良い関係を築けばいい。

同じように、AIを必要としないことでもありません。

自律した個人がAIを使い、自分にはない知識を借り、対話し、思考を深めればいい。

問題なのは、会社でもAIでもありません。

自分の人生と思考の主体を、そこに預けてしまうことです。

会社依存から抜け出した先で、AI依存になってしまえば、依存先が変わっただけです。

AI時代だからこそ、キャリア自律の意味をもう一度考える必要がある。

そんな時代に入っているのではないでしょうか。

最後に、私自身も問い続けたいと思います。

私は今、誰かに正解を預けていないだろうか。

そして、

自分で問い、自分で考え、自分で選び、その選択を引き受けているだろうか。

ライフワークスでは、ミドルシニアの活躍やキャリア施策について、多くの企業をご支援しています。貴社の状況や課題について、私たちと一緒に整理してみませんか?

著者:佐々木 淳

佐々木淳大学卒業後、一貫して人材業界で20年。主にIT業界やコンシューマサービス業界大手企業の採用コンサルティングを10年あまり手掛ける。その後、ライフワークスに入社。年代別のキャリア支援や、上司向け部下のキャリア開発支援などといったソフト面の施策企画提案に幅広く携わる。大手を中心に幅広い業界のクライアントに対するコンサルティング実績を持つ。
現在は、年間約200社のキャリア課題解決に向けた施策立案の責任者として従事。

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