キャリア自律とは、自分の好きにすることではない ― 構造を見据えて、自分で選び、その結果を引き受ける ―

2026.09.15
コラム

ライフワークス 執行役員の佐々木です。

「キャリア自律」という言葉が、企業の人事施策の中でも当たり前に使われるようになりました。

自分のWillを考える。
自分らしいキャリアを描く。
自分のキャリアは自分でつくる。

どれも大切なことだと思います。

一方で、キャリア自律という言葉が、ときに「自分のやりたいことを大切にすること」「自分の意思を尊重してもらうこと」と、少し狭く捉えられているようにも感じます。

私は、キャリア自律とはもう少し厳しいものだと考えています。

自分から見えている世界だけが、世界ではない

仕事をしていると、

「自分はこうしたい」
「自分はこう評価されるべきだ」
「会社の制度はおかしい」
「上司は自分のことを理解してくれない」

と感じることがあります。

もちろん、本当に会社や上司に問題があることもあります。

ただ、そのときに忘れてはいけないことがあります。

それは、自分から見えている世界だけが、すべてではないということです。

昔から「一方を聞いて沙汰するな」という言葉があります。

一方の話だけを聞いて、物事を決めつけてはいけないという意味です。

これは、キャリアを考えるうえでも非常に重要だと思います。

自分からは、自分の事情がよく見えます。

しかし上司からは、チーム全体の事情が見えているかもしれない。
経営からは、事業全体の状況が見えているかもしれない。
顧客からは、自分とはまったく違う価値が見えているかもしれない。

自分が正しいと思っていることも、違う場所から見れば、別の景色が見えることがあります。

「自分の意思を持つこと」と「自分の意思を通すこと」は違う

キャリア自律には、自分の意思が必要です。

しかし、

自分の意思を持つことと、自分の意思を通すことは同じではありません。

「私はこうしたい」

それ自体は、とても大切な意思です。

でも、そこで思考を止めてしまえば、自律ではなく単なる要求になってしまうこともあります。

なぜ会社は自分にこの役割を求めているのか。
なぜこの制度に変わったのか。
自分にはどのような期待が寄せられているのか。
市場から見たとき、自分にはどのような価値があるのか。

そうした自分の外側にある構造まで見たうえで、

「では、自分はどうするのか」

を考える。

私は、それがキャリア自律だと思っています。

自律とは「構造を見据えて選ぶ」こと

会社の言うことをすべて受け入れることが、自律ではありません。

一方で、自分の意思を会社にすべて受け入れてもらうことも、自律ではありません。

会社にも事情がある。
個人にも事情がある。

その双方を理解し、対話したうえで、自分で選ぶ。

場合によっては、会社の提案を受け入れるかもしれない。

場合によっては、交渉するかもしれない。

そして、ときには、その会社を離れるという選択もあるかもしれません。

重要なのは、どの選択をしたかだけではありません。

その選択を、自分自身の選択として引き受けているか。

ここだと思います。

「会社に言われたから仕方なくやった」

「上司が決めたから自分には責任がない」

ではなく、

いくつかの選択肢がある中で、自分はこれを選んだ。

だから、その選択によって何を得るのか、何を失うのかも含めて、自分の人生として引き受ける。

それが、自律ではないでしょうか。

自律した個人は、何でも一人で決めるわけではない

ここで一つ誤解したくないことがあります。

自律とは、何でも一人で考え、一人で決めることではありません。

むしろ、多くの人と対話した方がいい。

上司にも聞く。
同僚にも聞く。
家族にも聞く。
専門家にも聞く。
AIと壁打ちしてもいい。

自分とは違う視点を積極的に借りればいいと思います。

ただし、最後に決める主体は自分です。

誰かに正解を預けるのではなく、さまざまな意見や情報を材料にして、自分で判断する。

「誰と考えるか」と「誰が決めるか」は別です。

キャリア自律とは、選択と責任を自分の手元に戻すこと

私は、キャリア自律という言葉を、

「自分らしく働くこと」

だけで終わらせたくありません。

もっと厳しく、もっと主体的なものだと思っています。

自分には見えていない世界があることを知る。

会社や他者の事情も理解する。

そのうえで、自分なりの考えを持ち、対話し、選ぶ。

そして、自分で選んだ道を、自分の人生として引き受ける。

キャリア自律とは、自分の好きにすることではない。

構造を見据えて、自分で選び、その結果を引き受けること。

環境変化が激しく、会社も個人も「正解」を持ちにくくなった時代だからこそ、この意味での自律が、これまで以上に求められているのではないでしょうか。

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著者:佐々木 淳

佐々木淳大学卒業後、一貫して人材業界で20年。主にIT業界やコンシューマサービス業界大手企業の採用コンサルティングを10年あまり手掛ける。その後、ライフワークスに入社。年代別のキャリア支援や、上司向け部下のキャリア開発支援などといったソフト面の施策企画提案に幅広く携わる。大手を中心に幅広い業界のクライアントに対するコンサルティング実績を持つ。
現在は、年間約200社のキャリア課題解決に向けた施策立案の責任者として従事。

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