社員の内発的モチベーションの向上は必須!向上させる方法を世代別に紹介

モチベーションは社員が自ら考え動くために不可欠と言えます。そのため、管理職や人事にとっては、社員のモチベーションの源泉を知り、そこに働きかけることも重要な役割のひとつです。しかし、外から働きかけることは容易ではなく、特に内発的モチベーションを周囲の人が意図的に引き出すことは難しいものです。この記事では内発的モチベーションとは何か、なぜビジネスにとって重要なのかを解説したあと、内発的モチベーションを向上させる方法を年代別にご紹介します。

2020.12.11
コラム

内発的モチベーションと外発的モチベーション

モチベーションとは「動機づけ」のことで、目標に向かって行動を起こしたり、行動を持続させたりするための要因です。モチベーションには、次のように「内発的モチベーション」と「外発的モチベーション」の2種類があります。

内発的モチベーション

内発的モチベーション(Intrinsic motivation)は「これを実現したい」「この人のようになりたい」など、自分の内側から湧き起こる興味や意欲、自分の意思で決めた目的などをもとにしたモチベーションです。「やる気」に近い言葉と言えるかもしれません。外部から強制されたものではなく、自分の意思によるものであり、長期間持続しやすいのが特徴です。

内発的モチベーションが高ければ、高い集中力や創造性が発揮されて質の高い仕事を行うことができ、生産性の向上も期待できます。 内発的モチベーションには、次のようなメリットがあります。

  • 行動の原動力が自分の内側にあるため、他から強制されることなく自主的に行動することができ、外的要因を必要としない
  • 自分の意思に基づいて行動し、その結果がまた次のモチベーションにつながっていくため、長期間効果が持続する
  • 自発的・能動的に行動することで仕事上の結果にもつながる。これを長期間繰り返すことで、能力的にも成長し続けることができる

一方で、次のようなデメリットもあります。

  • 興味や関心は個々に違っており、どうすれば内発的モチベーションを刺激できるかはそれぞれ異なる。そのため内発的モチベーションを刺激する方法は一般化しにくく汎用性が低い
  • 本人の興味や関心がある分野以外では発揮されにくい
  • 内発的モチベーションが発揮されても、本人の興味や関心の方向性と組織からの仕事上の期待役割が異なっていれば、仕事の成果が出ない可能性がある
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外発的モチベーション

外発的モチベーション(Extrinsic motivation)は、報酬や評価、賞罰、他者からの評価など、外的・人為的な要素に起因するモチベーションです。従来のビジネスでもよく用いられてきた手法です。

外発的モチベーションには、次のようなメリットがあります。

  • 昇給や人事評価など設定がしやすい要素であるため、汎用性が高い
  • 誰にでも、実践しやすい
  • 目標(ゴール)がはっきりしているため到達しやすい

ただし、次のようなデメリットもあります。

  • 目標に到達したらモチベーションが維持しにくい特性があり、長期的な維持が難しい
  • 内発的モチベーションによって行っていた行為に外発的モチベーションを設定することで、「やらされている仕事」という感覚が高まり、内発的モチベーションが減退する「アンダーマイニング効果」がある

ビジネスでは内発的モチベーションも重要

従来、ビジネスでは、他者から要因をコントロールしやすい外発的モチベーションが注目されがちでした。しかし、外発的モチベーションには前述のようなデメリットがあります。社員のモチベーションを仕事に活かすには、内発的モチベーションもうまく取り入れることが重要です。

なぜ内発的モチベーションがビジネスや組織において重要なのか

ビジネスには、外発的モチベーションだけでなく内発的モチベーションが不可欠です。理由は次の3つです。

内発的モチベーションは持続性がある

外発的モチベーションは目標に到達するとしぼんでしまうため、維持するためには外部からの新たな刺激が必要になります。そのため、外発的モチベーションは長期間維持することが困難です。一方本人の意思に起因する内発的モチベーションなら、外発的モチベーションと比較すると長期間高いレベルで維持できる分、行動の持続が可能な傾向があります。

内発的モチベーションは本人の成長につながる

内発的モチベーションに基づくことで、本人は能動的に行動します。その結果本人が成長し、結果的に組織の士気も高まり、組織全体にも大きな成果をもたらすことが期待されます。

報酬や昇格などで全社員の外発的モチベーションに働きかけることが難しくなってきた

現在は、年功序列制度が崩れつつあり、定期昇格や昇給といった見通しのつきやすい制度で外発的モチベーションに働きかけることが難しくなっています。そのため、内発的モチベーションの重要性が一層増しているのです。

内発的モチベーションと外発的モチベーションは車の両輪

社員の内発的モチベーションを、人事や管理職が意図的に引き出すことは難しいのが現状です。

しかし例えば、ノルマのような外発的モチベーションにより社員が努力し、その過程で社員自ら内発的モチベーションを発見するといったことはあり得ます。また、最初は外発的モチベーションである報酬を得るためだけに動く社員もなかにはいるでしょう。そうやって動くうちに、自分の能力に気付いたり顧客に感謝されたりして、内発的モチベーションへとつながることも珍しいことではありません。

外発的モチベーションと内発的モチベーションは相反するものではなく、相互に影響を与え合うものです。外発的モチベーションを通じて内発的モチベーションも向上するようなきっかけを与えることが、人事や管理職の役割のひとつとも言えます。

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内発的モチベーションを向上させるにはどうすればいいのか

内発的モチベーションを向上させる方法は世代によって異なります。世代別に、効果的な対策を紹介します。

20代(若手層)の内発的モチベーションを向上させるには

20代の若手社員の内発的モチベーションを向上させるには、キャリア自律の基礎を固めることがポイントです。キャリア自律とは、会社のキャリアプランに任せるのではなく、社員が自律的に自身のキャリア開発やキャリア形成を行っていくことです。

例えば以下のようなことをきっかけにキャリアについて考えたりロールモデルから自分の将来像を描いたりすることがキャリア自律への足がかりとなります。

  • 仕事の成果を評価され、フィードバックを受ける
  • 仕事の面白さや充実感、達成感を味わう
  • 研修などで、自身のキャリアについて考え実行計画を立てる機会を得る。その計画を実現するために必要な学びを考え、行動する
  • 社内外で多様なロールモデルを発見する。その仕事の進め方を参考にし、自分の将来像をイメージする

以上のようなことからキャリア自律の基礎固めができれば、内発的モチベーションをも大きく刺激します。

30~40代(中堅層)の内発的モチベーションを向上させるには

中堅層の内発的モチベーションを向上させるポイントは、内的キャリアの形成とキャリア自律の2つです。

  • 仕事観を整理し、自分らしい働き方や仕事とはという点について考える
  • 自分の仕事を俯瞰し、他者や組織からの期待を正しく捉えたうえで、自ら自分の役割を考えて専門領域を作っていく

50~60代(シニア層)の内発的モチベーションを向上させるには

シニア層の内発的モチベーションを向上させるポイントは、内的キャリアの整理とキャリア自律の2つです。

  • これまでのキャリア全体で培ってきたスキルや価値観を整理する
  • 整理した内的キャリアをもとに、定年前後からの新しい役割や環境に適応し、仕事に新たなやりがいとモチベーションを見いだせるようにキャリアプランを考え直す

***

社員の内発的モチベーションの向上へつなげるには、各年代の課題を明確にし、それに即したサポートが求められます。

世代別キャリアの課題と課題解決の方向性を解説し、現在と今後の施策案の整理に役立つ資料は以下よりダウンロードできますので、ぜひご活用ください。

【参考資料】「世代別のキャリア課題と、課題解決の方向性」解説と整理用シート
「世代別のキャリア課題と、課題解決の方向性」解説「世代別のキャリア課題と、課題解決の方向性」整理用シート
世代別のキャリアの課題と、課題解決の方向性を理解し、自社の状況に合わせて今後の施策案を整理していく際にお使いいただけるシートです。資料はこちらからダウンロードしてください。

次に、シニア層社員のキャリア自律から、若手・中堅層も含めた全世代のモチベーションアップ向上につながるシステムの構築に成功した事例をご紹介します。

全世代のモチベーションアップ向上につながるシステムの構築に成功した事例

株式会社ジュピターテレコムは、創業以来、M&Aを繰り返して成長してきた経緯から、多様な価値観や経験を持つ社員が一丸となるために、トップダウンで方向性を示さなければならない場面も多く、社員に受動的な姿勢が見られるという課題がありました。同社は60歳定年制で65歳まで再雇用を実施しているなか、徐々に定年を迎える社員が増えてきており、数年後には再雇用者が400名規模になる見込みで、こうした社員の職域開発が必要とされていました。

そこでライフワークスのサポートにより、幅広い部署のシニア社員から、社員がライフキャリアにまつわるさまざまなことを気軽に相談できる「キャリアアドバイザー(CA)」の選定・養成を開始。先だってCAとして活躍しているシニア社員を見て、CAを希望する人が多く、社員の内発的モチベーションにつながっていることがうかがえます。

CAは幅広い世代や部門の社員からキャリアや働き方に関する相談を受けるのが仕事です。部署が異なるからこそ相談がしやすい場合もあり、社員全体のキャリア自律促進の一助を担うことができます。

【関連情報】株式会社ジュピターテレコム様の事例
施策の背景や課題、取り組みの内容などを人事のご担当者様にうかがいました。詳細にご関心のある方は、こちらをご覧ください。

社員の内発的モチベーションの維持・向上には人事からの働きかけも重要

内発的モチベーションは自分の中から起こる感情であるため、自身で維持・向上させるものと考えている人が多いでしょう。しかし今回ご紹介したように、外部からの働きかけにより、モチベーションの源泉に気付くこともあります。社員の内発的モチベーション向上に働きかけることは、個人の成長をもたらすだけでなく、組織の成長にもつながります。そのため、内発的モチベーションに働きかけることは人事や管理職の大切な役割のひとつとも言えます。ご紹介した内容を参考に、社員の年代や課題に応じた適切なサポートで、社員の内発的モチベーションの向上を実現してください。

ライフワークスでは、年代ごとの課題に即したキャリア研修をご提供しています。また年代別だけではなく、「女性向け」や「仕事と育児や介護の両立期にある人向け」など、対象者やその課題に合わせてさまざまなプログラムを提供しています。サービスの詳細はWEBサイトをご確認下さい。

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この記事の編集担当

黄瀬 真理

黄瀬 真理

大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。

国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定

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