ジョブ型雇用とは?意味やメンバーシップ型との違い、メリットを解説

働き方の変化や市場のグローバル化を受けて、雇用システムの見直しに関する機運が高まっています。そこで注目されているのが、ジョブ型雇用です。入社後に適正を見極める従来のメンバーシップ型とは異なり、事前に職務内容を明確にしたうえで雇用契約を結びます。

本記事では、ジョブ型雇用の特徴やメンバーシップ型雇用との違い、メリット・デメリットなどを徹底解説します。ジョブ型雇用の導入やメンバーシップ型雇用との併用をご検討の際は、ぜひ参考にしてください。

2022.10.19
コラム

ジョブ型雇用の基礎知識

終身雇用制度や年功序列型賃金制度などが見直され、雇用や採用に対する考え方が変化しています。そこで注目されているのががジョブ型雇用です。ここでは、ジョブ型雇用の意味や日本企業でよく見られるメンバーシップ型雇用との違いを解説します。

ジョブ型雇用とは?

ジョブ型雇用とは、企業があらかじめ定義した職務内容(ジョブ)に基づいて人材を採用する雇用システムを指します。仕事内容や責任の範囲、必要な能力だけでなく勤務時間や勤務場所なども明確に定めて雇用するのが特徴です。日本では専門分野のスペシャリストを雇用する際の新しいシステムと捉えられがちですが、欧米では以前から主流となっている採用方法です。

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違い

ジョブ型雇用の比較対象として使われる言葉に、日本式のメンバーシップ型雇用があります。
メンバーシップ型雇用は労働時間や勤務地、職務内容を限定しない雇用の仕方を指します。会社都合で転勤や異動が起こり得るのが特徴です。

ジョブ型雇用は、組織の運営に必要なスキルを持つ人材を探して採用活動を行います。一方、メンバーシップ型雇用の場合はまず総合職として人材を採用し、部署や職種を異動して経験を積ませ、能力に応じて人材配置を行うのが一般的です。従業員の人材育成を目的とした戦略的な異動は、ジョブローテーションと呼ばれます。

ジョブ型雇用が注目されている背景

ジョブ型雇用は、今後さまざまな企業がその特徴を取り入れる可能性の高い雇用システムだと考えられています。ここでは、ジョブ型雇用が注目を集めている理由をご紹介します。

経団連によるジョブ型雇用の導入推奨

日本経済団体連合会の第5代会長である中西宏明氏が、2019年に発言した内容がきっかけでジョブ型雇用が注目されるようになりました。
具体的には、以前から日本で行われてきた終身雇用や新卒一括採用の仕組みが成り立たなくなってきたと述べ、ジョブ型雇用を念頭に置いた雇用を考えていくのが良いという内容です。

また、2022年の経団連による経営労働政策特別委員会報告では、ジョブ型雇用の導入・検討が必要との報告があがっています。
これを受けて、さまざまな企業でジョブ型雇用を何かしらの形で導入して雇用のあり方を見直す動きが加速しています。

テレワークをはじめとする働き方の変化

新型コロナウイルス感染症の拡大により、テレワークや時差出勤などを実施する人や会社が多くなっています。
その結果、従来の評価基準では、社員の労務管理や評価を正しく行うことが難しくなっているケースも少なくありません。

ジョブ型雇用を活用することで、職務内容や責任範囲が明確になるため、成果に基づく的確な評価が可能になります。正しく運用することで長時間労働の是正や生産性向上にも役立つでしょう。

専門職や専門業種の人材不足

新しい技術の開発にともない、幅広い分野に知見のあるゼネラリストだけでなく、ITエンジニアなどの高い専門性を持つ人材の獲得が求められるようになりました。
ジョブ型雇用では、スキルや業務内容を踏まえて採用を行うため、専門性の高い人材の獲得を目的とする場合に相性が良いとされています。

ダイバーシティ(多様性)の普及

時代の変化にともない、ダイバーシティが浸透してきている点もポイントです。具体的には、子育て・育児と両立しながらの時短勤務、介護をしながらの在宅勤務、外国人労働者の受け入れなどの事例があります。
多様化した社会と人々のニーズに応えるには、多様な価値観を持つ人がそれぞれの持ち味を発揮できる環境を整備することが重要です。ジョブ型雇用は働き方の多様性を受け入れるのに適しており、人材の確保にもつながります。

ジョブ型雇用のメリットとデメリット

ジョブ型雇用には魅力も多いものの、課題もあります。こちらでは、ジョブ型雇用のメリットとデメリットについて、労働者と企業それぞれの視点でお伝えします。

ジョブ型雇用のメリット

  • 働く側のメリット
    ジョブ型雇用では職務内容が事前に定められているため、労働者は契約外の業務を回されることが少ないというメリットがあります。自分が得意とする業務に集中しながらスキルアップを図ることが可能です。雇用契約時に職務内容や働き方、勤務地などを確認でき、入社後の働き方をイメージしながら就職先を選べます。
    また、ジョブ型雇用では勤続年数や年齢に関係なく給与や待遇が決まるため、スキル次第では良い条件で報酬を得ることもできます。また、ジョブ型雇用では勤続年数や年齢に関係なく給与や待遇が決まるため、スキル次第では良い条件で報酬を得ることもできます。
  • 企業側のメリット
    ジョブ型雇用を導入すると、企業は職務内容により採用を行うことから、即戦力となる人材の確保につながりやすい点がメリットです。あらかじめ職務内容や働き方を明確に定めてから採用を行うため、入社後の仕事のミスマッチが起こりにくい傾向にあります。欧米の場合、ミスマッチが発生した際に企業は解雇をして新たな人材を採用し、労働者は退職して新たな就職先を探すのが一般的です。
    また、職務範囲や評価制度が明確になることで、働く側がパフォーマンスを発揮しやすくなり、個々の作業効率の向上も見込めます。組織としての生産性向上につなげやすくなるでしょう。

ジョブ型雇用のデメリット

  • 働く側のデメリット
    ジョブ型雇用は、職務内容に応じたスキルを持つ人材を採用する雇用形態です。そのため、新卒の学生やスキル不足の人にとっては、未経験での就業機会が狭まる可能性のある雇用システムともいえます。必要な業務に対して力を発揮できる人材になるために、インターンを活用して経験を積む、研修を受けるなどして、自らの能力を高めていくことが求められます。
  • 企業側のデメリット
    ジョブ型雇用では、職務記述書(ジョブディスクリプション)に記載した業務しか働く側に任せられないケースが一般的です。突発的な業務が発生した場合でも、契約外の内容に関しては対応してもらえない可能性があります。
    また、人材の流動性がそれほど高くない日本では、ジョブ型雇用を導入しても職務を行えるレベルの人材が集まりにくい点にも注意が必要です。苦労して人材を確保した場合でも、優秀な人ほど専門スキルを活かしてよりキャリアアップのできる企業へ流出するおそれがあります。

「ジョブ型雇用を有効活用して従業員が能力を発揮しやすい環境を整備しよう」

今回は、ジョブ型雇用の特徴や注目されている背景、メリット・デメリットについて解説しました。ジョブ型雇用は目的ではなく、企業価値を発揮するための手段です。さらに、ジョブ型雇用は従来のメンバーシップ型雇用と対立する関係にあるわけではなく、互いを共存させながら、補完し合う形で活用することも可能です。ジョブ型雇用のメリットを生かしつつ、メンバーシップ型雇用の課題を解消し、従業員がパフォーマンスを発揮しやすい、自社に合う環境を整備しましょう。

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この記事の編集担当

黄瀬 真理

黄瀬 真理

大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。

国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定

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