HRBPとは?導入時のポイントと活用事例について

今、注目されているHRビジネスパートナー(HRBP)とは何でしょうか。持続的な企業価値の向上が求められる中、人事部門に求められることが多様化しています。

本記事では、HRBPという人事機能が今求められる背景などを紹介していきます。また、HRBP導入時のポイントと複数の企業様の具体的な活用事例なども交えて、HRBPをどのような方法で戦略的に位置づけていくのかについても、解説していきます。

HRBPの仕組みをすでに導入されている、あるいは検討中の方も、この機会にポイントをご確認いただき、戦略検討の一助にしていただけますと幸いです。

2023.01.16
コラム

1.HRビジネスパートナー(HRBP)とは?

企業には、様々な人事機能があります。例えば、採用、教育、人事制度構築などです。HRBPとは、その中でも、事業部門の経営者、事業責任者との戦略的パートナーとして、「事業成長を人と組織の観点からサポートする役割を担う機能」です。HRビジネスパートナーとは、事業成長のための問題解決に対して、人の側面で対応するのが主な仕事です。攻めの人事機能と言ってもいいでしょう。Human Resources Business Partnerの略称となります。

HRBPの概念は、アメリカのミシガンビジネススクール教授であるウルリッチ教授が、その著書「MBAの人材戦略」の中で、紹介したが発端と言われています。その著書で「人事部門が果たすべき4つの役割」の1つとして提唱されたのが「HRBP」です。同氏は人事の役割をHRビジネスパートナー(HRBP)、人材管理エキスパート、社員チャンピオン、チェンジエージェントの4つに整理しています。ここで言われるHRBPとは、経営層のビジネスパートナーとして組織・人材戦略の策定を行う人事プロフェッショナルと位置付けられています。

日本企業でも、昨今はHRBPを人事機能に取り入れ、採用している企業が目立ってきています。

2.今、HRBPが求められる背景

なぜ、今HRBPが求められているのでしょうか?その理由は以下3点です。

1)より戦略的な人事機能が必要

今までの日本の人事機能は、どちらかというと労務管理や採用教育、制度構築が中心で、戦略的な観点が欠如していたとも言われています。今後は、グローバル化/テクノロジーの進歩などの要因により、既存体制の人事部では、現代環境への対応が難しくなるため変化に対応するためにもHRBPを導入し、経営戦略と連携しながら人事戦略を検討できる体制を作っていくことが重要となるのです。

しかし、激しい環境変化に対応しながら、企業として価値発揮し続けるためには、人事機能にも「戦略性」が求められるようになっています。

2)現場との密接な連携が必要

様々な環境変化が起こっているからこそ、現場を重視し密接な連携に基づいた人事機能の重要性が高くなっている点が挙げられます。刻々と変化するビジネス環境を現場視点で捉え、人事戦略としてを考える必要性も出てきました。現場の状況と乖離した人事施策ではなく、連携を実現することが求められているのです。

3.本社人事と、HRBPの違いとは

本社人事機能と、HRBP機能は何が違うのかと混同することが、しばしばあります。この二つの違いを挙げると以下の通りでしょう。

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まず、本社人事機能は、多くの場合、会社全体の戦略や労務管理を司ります。時に、全体運営の効率化をはかりながら、コスト最少、成果最大を目指すこともあります。必要な人材としては、どちらかというと、各種人事領域の専門性であり、ときに外部のコンサルタントと連携し、より専門的な戦略を練っていきます。

一方で、HRBPは、事業部の事業計画の達成を人事・組織の専門家として支援していく立場であり、人事の全領域の知識を広く持つジェネラリストが求められています。

また、部門人事とHRBP(HRビジネスパートナー)との違いも疑問に上がることがあります。様々な解釈がありますが、一般的な捉えられ方としては、部門と人事との架け橋、オペレーションの支援などを主な役割とするのが部門人事、こちらに戦略的な役割を追加したのが、HRBPとも言えるでしょう。

4.HRBP導入時のポイント

では、実際にHRBPを導入するメリットと導入するにあたって、コツはあるのでしょうか?また、求められるスキルはどのようなものでしょうか?
導入時のコツとしては、以下3点が挙げられるでしょう。

1)事業部門側に導入メリットを理解してもらう

上記の通り、事業部門側にまずは納得して理解してもらうことが必要です。

2)他社事例を参考にする

そのうえで、他社事例から、どの程度の人員リソースを送り出し、どのようなミッションと目標を与えるのかを予め明確にすることが必要でしょう。

3)最適人材をアサインする

最適な人材という意味では、特定領域の専門家というよりは、人事全般を理解しており、かつコミュニケーションスキルが高い人材をアサインすることが望ましいでしょう。しっかり、専門家の知見を持って、事業部門側に意見も言えることが必要でしょう。より具体的には、以下3点がHRBPの人材として最適でしょう。

①人事全般について広い知識を有する人材
②経営全般・事業に関する基礎知識を有する人材
③高いコミュニケーション力(信頼関係構築)と課題対応力を有する人材

上記人材を獲得するか、育成し、HRBPにアサインすることが最適でしょう。

5.HRBP活用の具体例

HRBPを導入している企業の事例などはあるのでしょうか?具体事例として、以下企業様での変革実行・導入事例を参考にされてもよいかもしれません。

・NEC様の事例
<参考引用:https://jpn.nec.com/csr/ja/society/labour_training.html
上記の人事戦略に関する記事には「COE機能が中心となり人事戦略の立案、プログラムや制度、ポリシーなどを最適に策定し、全社への人材開発・育成の施策の展開をHRBPとともに行っています」とされています。

・三井化学様の事例
<参考引用:https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/society/employee/
上記のサステナビリティレポート内では「本社機能としては、HRマネジメントチームおよび経営陣幹部のパートナーとしてSenior HRBP※2を設置しました。これにより、事業/機能本部における経営戦略の進展具合がタイムリーに把握・共有することができ、毎年の人材戦略を見直したうえで実効性のある人事施策の展開を推進しています。」とHRBP機能の強化を謳われています。

・DeNA様の事例
<参考引用:https://fullswing.dena.com/archives/6010
上記のメディアのなかで、「DeNAは2014年からHRBPの概念を取り入れ、戦略人事の実践を推進してきました。」と先駆的な取り組みが紹介されています。

総じて、HRBPや近い概念を人事機能に取り込もうとする流れは生まれています。一方で、形式的にHRBPを導入はしたものの、自社に沿った形、より実質的に機能するHRBPに進歩される過程は、まだまだこれからだと言ってもいいかもしれません。

6.まとめ

HRBPとは、特に事業部門の経営者の戦略的パートナーとして、事業成長を人と組織の観点からサポートする役割を担う機能を指します。今、激動する時代の中で、どのようにHRBPを導入するのか/位置づけるのかについて、課題感をお持ちの企業様は多いのではないでしょうか。?導入して終わりではなく、HRBPをより機能させていくためには、その人材の強化やあるべき姿の再定義も必要になってくるでしょう。

この記事の編集担当

黄瀬 真理

黄瀬 真理

大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。

国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定

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