健康経営とは?企業の取り組みや施策、メリットをわかりやすく解説

高年齢者雇用安定法などの法改正もあり、人生の中で働く期間が以前より長くなってきました。そのような中で、ビジネスシーンでの健康に対する意識が高まりつつあります。
また、WHOは健康について「病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」と定義しました。上記の観点から、働く時間が長くなる中で個々が働くことをより充実させていく取り組みも、一つの健康として捉えられるのではないでしょうか。

本記事では、経営的視点で健康を推進する「健康経営」について解説します。企業側のメリットや施策の例、注意点までお伝えします。ぜひご一読ください。

【出典】「健康の定義」(公益社団法人 日本WHO協会)

2022.08.22
コラム

健康経営の基礎知識

初めに、健康経営に関して押さえておきたい基礎知識を解説します。今後、自社の健康経営の推進を検討しているご担当者様は、経営的視点で基本の考え方を確認しておきましょう。

健康経営とは?

健康経営とは、従業員の健康増進の施策へ取り組んだり、健康づくりに投資したりする経営手法のことです。経済産業省ではこれを「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」と定義しています。

健康経営は、従業員の健康を促進し、企業の生産性を高めることを目的としています。従業員の健康維持は、「生きがい」や「働きがい」を実現する土台となる重要な課題です。企業の成長や社会の発展にも不可欠と考えられています。

【出典】「健康経営 1.健康経営とは」(経済産業省)

健康経営に関する公的な制度

  • 健康経営銘柄
    優良な健康経営を行う企業を評価し、投資家などへ向けて紹介する制度です。健康経営の推進を目的としています。選定の対象となるのは、東京証券取引所の上場会社です。選定企業の取り組み事例のデータは、経済産業省のWebサイト上で公開されます。

    【出典】「健康経営銘柄」(経済産業省)
  • 健康経営優良法人認定制度
    健康経営を実践している全国の優良な大企業や中小企業を表彰する制度です。健康経営に取り組む企業が社会的に評価される環境づくりを目的としています。こちらの制度では、「大規模法人部門(ホワイト500)」「中小規模法人部門(ブライト500)」の2部門が用意されています。ブライト500の申請では、加入する保険者の健康宣言事業に参加することが条件です。認定企業にはロゴマークの使用が認められます。

    【参考】経済産業省「健康経営優良法人認定制度」

健康経営が企業にもたらすメリット

健康経営へ積極的に取り組む企業は、経営の観点で多くのメリットを得られます。ここでは、健康経営が企業にもたらすメリットや効果についてお伝えします。

従業員の疾患によるリスクを減らせる

健康経営の施策を実施すると、社内の健康意識が高まります。これにより、心身の不調によるリスクの軽減を期待できるのがメリットです。また、従業員の健康上の理由による事故や労災、離職などを避けやすくなります。企業のプレゼンティーイズム(=健康問題による生産性の低下)や、アブセンティーイズム(=健康問題による欠勤)に備え、リスクマネジメントに効果的です。

従業員のパフォーマンス向上を期待できる

企業が健康づくりへ積極的に取り組み、従業員が健康な状態であれば、意欲が高まります。貢献意欲や帰属意識が向上すると、仕事に対して自発的かつ積極的に取り組む従業員が増加します。従業員が所属する企業や経営陣への信頼を築くことや、従業員エンゲージメントの向上にも繋がるでしょう。

また、健康経営によって従業員が健全な状態で働けると、生産性向上や業績向上にもつながります。生産性が高い従業員が増えれば、組織がより活発になるでしょう。健康経営は組織全体のパフォーマンスにも良い影響を与えると考えられます。

以下の関連記事では、人事・経営者が健康経営と併せて押さえておきたい「従業員エンゲージメント」について詳しく解説しています。課題の解決へ向けて、ぜひ参考にお読みください。

企業価値を高められる可能性がある

健康経営に取り組む企業は、ステークホルダーから高い評価を得やすいのがメリットです。例えば、取引先企業・消費者・地域社会・金融機関・投資家などからの評価に好ましい影響がもたらされる可能性があります。企業イメージや顧客満足度の向上、商品ブランドのイメージアップなどの効果が期待できるでしょう。さらには、職場の魅力が高まり、優秀な人材の採用にも効果を発揮すると考えられます。

健康経営を推進する主な施策

企業が健康経営を推進するには、どのような施策へ取り組むべきでしょうか。ここでは、社内で活用できる具体的な施策の例をご紹介します。

健康診断の受診推進

健康診断の受診率を高めるための施策です。従業員が自身の健康状態を把握し、疾患の早期発見や予防につなげられます。なお、労働安全衛生法では、事業者による健康診断の実施や、従業員の健康診断の受診が義務づけられています。施策の具体例として挙げられるのは、企業側で健康診断を受ける時間を確保する、産業医が健康診断の重要性を発信するといった取り組みです。

生活習慣病対策の実施

従業員の生活習慣病の予防をサポートする施策です。生活習慣病は日頃の生活習慣が要因となる疾患で、働き方とも関係が深いと考えられます。勤務中の食習慣や運動習慣を改善することも大切です。こうした生活習慣病のリスクの回避が、健康寿命を延ばすことにつながります。健康増進を啓発する社内イベントの実施、社員食堂での健康的な食事の支援などの取り組みも効果的でしょう。

メンタルヘルス対策の実施

従業員のメンタルヘルスの健康保持へ向けた施策です。近年では、「うつ病」をはじめとする心の病気が社会で問題となっています。ビジネスシーンでは職場の人間関係や長時間労働による過剰な仕事量など、労働環境が要因となって心の病気にかかるケースも少なくありません。従業員の不調を早期に発見し、早めに対処することが大切です。ストレスチェック制度の導入、メンタルヘルスに関する社員研修やセミナーの開催などに取り組むと良いでしょう。

健康経営を推進する際の注意点

社内で健康経営を推進する際は、以下のポイントに注意して取り組みましょう。最後に、施策を成功させるために確認しておくべき注意点をお伝えします。

長期的に取り組む施策であることを理解する

健康経営のための施策は、長い時間をかけて行うものが多い傾向にあります。従業員が健康な状態を得るには長期的な改善が必要なためです。健康課題の解決までには一定の時間がかかります。推進直後は効果が見えにくいことをあらかじめ把握し、担当者間で共有しておきましょう。

施策の効果検証が難しいケースもある

健康経営の施策によっては結果が可視化しづらいものもあります。健康は多くの要因から構成されており、数値化するのが難しいといえます。例えば、欠勤率の低下が見られたとしても「従業員が健康になったから」と断言するのは難しいでしょう。投資したものの、調査により効果を明確に把握することには困難が伴うと考えられます。

自社の将来へ向けて健康経営に取り組みましょう

ここまで、健康経営について解説しました。高年齢者雇用安定法が改正されるなど、70歳になっても働き続ける時代が到来しようとしています。労働人口減少を考えると、多様な年代が成果を出せる環境を整えていくことの重要性が上がっていくでしょう。その一貫として、健康経営を捉える必要があるのではないでしょうか。従業員の健康に配慮した取り組みを企業側が「コスト」と捉えるのではなく、「将来への投資」と捉えることが大切です。本記事を、自社の将来へ向けた健康経営の推進のヒントとしていただけますと幸いです。

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この記事の編集担当

黄瀬 真理

黄瀬 真理

大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。

国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定

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