パワハラが企業に与える影響とは。パワハラを起こさない職場づくりのポイントも解説

2020年6月にパワハラ防止法が施行され、企業は一層パワハラ対策に力を入れていく必要があります。「法的に守らなければならない」という観点だけではなく、パワハラ対策に向き合い、対策を行うことで、エンゲージメント低下の防止や離職防止などにも繋がるでしょう。

しかし、「指導」と「パワハラ」の線引きが難しいことなどが、パワハラ対策を行っていく上で課題として挙げられます。

今回は、パワハラの正しい定義や企業に及ぼす影響などを解説します。
予防策のポイントなどもお伝えしますので、ぜひ参考にご一読ください。

2022.07.08
コラム

パワハラの定義と具体例

パワハラとは、パワーハラスメントの略称です。厚生労働省は「職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為」と定義しています。

パワハラ行為は一般的に、上司が部下に対して行うものと理解されがちです。一方、実質的に部下が優位な立場にあるとみなされる場合、部下から上司へのパワハラ行為もありうるのです。例えば、専門性を有する部下が、業務上必要な範囲を超えて、上司に無理な要求をすることや、嫌がらせをすることも、パワハラ行為と判断される可能性があります。

被害者の精神疾患や業務の生産性低下にもつながるパワハラ問題の事案はどのようなものがあるのでしょうか?大きく分けて、メンタル(精神)面への攻撃とフィジカル(身体)面への攻撃になります。

まずは、メンタル面への攻撃ですが、主に言動・発言によるものとなります。暴言を吐く、過大な叱責に加え、人格を否定する行為、特定の個人だけ隔離した環境に置く、無理する行為も含まれます。また、フィジカル面への攻撃では、言葉だけではなく、実際に相手を殴る、蹴るなどの直接的な暴力に加え、ものを投げつける行為なども間接的な攻撃にあたる場合があります。

パワハラが企業に及ぼす影響

これらのパワハラ行為が、企業にどのような影響を及ぼすのでしょうか?以下の3つの影響が考えられます。

1) 従業員エンゲージメントの低下

パワハラ行為が常態化しているような組織では、当然、従業員の会社への愛着度やエンゲージメントが低下していきます。エンゲージメントが希薄になると、組織としての仕事の質が下がり生産性の低下につながります。お客様へのサービス品質や業務品質も低下していくでしょう。このような環境では従業員エンゲージメントは低下し、従業員の離職リスクも高まります。これらは、企業にとって、大きな損害と言えます。

2) メンタル疾患者の増加

パワハラにより、メンタル疾患者が増加する可能性があります。メンタル疾患者が増えると、企業の正常な運営に支障をきたします。例えば、職場内における嫌がらせ行為、いじめ、暴行や職場内のトラブルにより、うつ病などの精神障害を発病し、労災補償を受けるケースもあります。厚生労働省のデータによると、上下関係・対人関係による精神障害の労災補償の支援決定件数は年々増加しているようです。

参考引用:データで見るハラスメント(厚労省)

3) 採用コストの増加

一人のパワハラ常習者や、パワハラ行為を放置するならば、従業員の離職による採用コストの増加を覚悟しなくてはならないでしょう。頻繁に退職者の代わりを採用することが求められ、その採用コストは、企業にとって大きな金銭的負担となりえます。

パワハラ防止法の概要と背景

上記のような背景・理由もあり、2020年6月1日より「パワハラ防止法」が施行されています。正式名称は「改正労働施策総合推進法」です。パワハラの基準を法律で定めることによって、具体的な防止措置を企業に義務化するのが主な目的です。適切な措置を講じていない場合には、是正指導の対象となります。

なお、中小企業については2022年3月31まで努力義務期間とされてきましたが、2022年4月1日からは、大企業だけでなく、中小企業にも本格的に施行されています。

参考引用:厚生労働省

義務付けられる措置の内容としては、主に以下の4点となっています。
(1)事業主の方針等の明確化および周知・啓発
(2)相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
(3)職場におけるパワハラに関する事後の迅速かつ適切な対応
(4)そのほか併せて講ずべき措置

このパワハラ防止法が導入された背景には、2020年に厚生労働省が実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」があります。調査によると、過去3年以内にパワーハラスメントを受けたことがあると回答した者は31.4%でした。また、都道府県労働局における2020年6月の労働施策総合推進法施行後の「パワーハラスメント」の相談件数は1万8千件、「いじめ・嫌がらせ」の相談件数も2020年度には約8万件であるなど、パワハラへの早急な対策が求められていたことが背景にあるようです。

参考引用:職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!(厚労省パンフレット)

パワハラを起こさない職場づくりのポイント

では、パワハラを起こさない職場づくりのポイントは何でしょうか?企業の主な取り組み事例を紹介いたします。

1) 新任管理職研修などでの徹底教育

まず、パワハラの現状について、新任となる管理職にしっかり解説し、理解してもらう必要があります。もちろん、全社員が理解をしておくべき内容ですが、まずはリーダーとなる管理職層にしっかり浸透させることが必要でしょう。管理職昇進時に、パワハラの定義とその影響について、しっかり教育をすると同時に、定期的に管理職向けに最新動向を発信するなど、情報のアップデートも必要でしょう。

2) 日常の啓発活動

パワハラ行為は、日常のふとした気のゆるみで起こってしまうことも多いでしょう。そのため、常に従業員全員が意識をしておく必要があります。例えば、社内ポータルサイトの常に見えるところに注意喚起をしておくこと、管理職が月次ミーティングで注意喚起することを習慣かする等々、常に会社全体での高い意識づくりが必要です。

3) 相談窓口の設置と再発防止徹底

いかに気を付けていても、従業員のパワハラ行為、その疑い例が発生してしまう場合もあります。その場合にも迅速に対応できるように、従業員相談窓口を設置し、利用を呼びかけましょう。相談窓口は匿名でも相談できるようにする他、密室でヒアリングする等の相談者の安全面への配慮も重要になってくるでしょう。そして、予防措置、再発防止等の徹底も必要でしょう。

4) クロス1on1

1on1とは、一般に直属の上司と部下が話す定期的なミーティングを指します。これとは別に、クロス1on1制度を設置する会社もあるようです。これは、自分の直属の上司ではない、他の部署の上位者やメンターとマンツーマンで話す機会をもうける取り組みです。直属の上司には伝えにくい悩みでも、他の部署の上司には発言できることがあります。また、直属上司自体がパワハラの疑いがある場合は、このようなクロス(違う部署)での1on1が、情報把握の一助になったりもするのです。この取り組みにより、部署内に情報が閉じ困ることなく、社内で広く情報を行き渡らせることが可能です。

パワハラの相談を従業員から受けたら

パワハラの相談を本人から受けた場合、どうすればいいでしょうか。まずは、社内の関連部門としっかり連携して、通報してくれた相談者の心のケアをすることが大事でしょう。その後、しっかり事実・状況確認をして、パワハラを起こした加害者に対しては、厳正に対処していくことが大事です。また、該当者の周囲にも同じような被害者がいる可能性も否定できません。その該当部門にパワハラを許容する組織風土、就業環境がある場合もあるので、人事部門の担当者とも連携し、見逃さないようにしましょう。必要に応じ、弁護士などの専門家の力を借りて、解決することも必要でしょう。

まとめ

パワハラ防止法は2022年4月より、中小企業も含め、幅広く企業への施行が始まっています。1件のパワハラが起こす被害は、想像を超えて、企業側、労働者側へ大きなインパクトになっていくでしょう。パワハラを見逃さないことも大事ですが、パワハラ自体を起こさない組織風土づくりに経営者と一体となって取り組むことが重要でしょう。

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