従業員満足度(ES)とは?向上させる方法、そもそもの意味や目的を解説

一人ひとりの従業員が仕事に働きがいを感じて、最大限のパフォーマンスを発揮できるようになれば、会社には多くのメリットがもたらされます。そこで着目したいのが、「従業員満足度(ES)」の指標です。
本記事では、従業員満足度の基礎知識から、満足度を向上させる方法までお伝えします。高いパフォーマンスを発揮できる組織を目指すために、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。

2022.12.09
コラム

1.従業員満足度の意味と効果

初めに、従業員満足度に関する基礎知識を解説します。用語の意味や、似ている用語との違い、会社にもたらされる効果についてお伝えします。

1)従業員満足度(ES)の意味

「従業員満足度(Employee Satisfaction)」とは、会社で働く従業員の満足度を表す指標です。略してESと呼ばれることもあります。従業員満足度の指標によって、従業員が会社の仕事や待遇にどれだけ満足しているかを表すことができます。

従業員満足度が高い会社では、従業員が主体的に物事に取り組む傾向があります。

従業員が主体的に取り組む環境では、従業員同士のコミュニケーションも盛んになり、生産性向上や離職防止、顧客満足度(CS)の向上などにも繁がるでしょう。従業員満足度を高める施策によって、働きがいのある職場づくりに取り組むことが大切です。

仕事のやりがいの詳細については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
→仕事のやりがいとは?従業員が感じる瞬間と自分で見つける方法

2)従業員エンゲージメントとの違い

従業員エンゲージメントとは、従業員の会社に対する自発的な貢献意欲や、会社への信頼度合いのことです。従業員満足度が会社や仕事への「満足度」を指すのに対して、従業員エンゲージメントは「自発的な貢献意欲」を指す点に違いがあります。どちらも良好な職場環境を作る上で必要な考え方だといえます。

3)従業員満足度を上げる効果

①生産性の向上
会社や仕事に対する満足度が高いと、従業員が当事者意識を持つようになります。一人ひとりがやる気をもって前向きに仕事へ取り組むようになり、組織内のモチベーション向上が期待できるでしょう。主体的な取り組みが全体のパフォーマンスを向上させることから、個人の生産性アップが将来的には会社の業績向上にもつながります。

②人材の定着
従業員満足度が高い会社では、従業員の不満が少ないことから、定着率が上がりやすいのが特徴です。その反対に、従業員満足度が低い会社ほど離職率が高い傾向にあります。 離職率が低下すると、従業員の長期的なキャリア形成が可能となります。そうすることで、人材計画に沿った育成がしやすくなり、従業員のパフォーマンス向上が期待できるでしょう。優秀な人材の流出を防ぎ、人材が育ち活躍することで、事業の成長にも繋がるでしょう。

③顧客満足度(CS)の向上
従業員満足度が高いと、顧客満足度(Customer Satisfaction)も高くなる傾向があります。顧客満足度とは、商品やサービスに対する顧客の満足度を表す指標です。満足度が高いほど、リピート購入が増えたり良好な口コミが広まったりしやすいため、会社の収益が増すと考えられています。

従業員満足度が高い従業員は自社への愛着や帰属意識が高く、商品やサービスをより深く理解するように努めるでしょう。結果として、顧客に提供する商品やサービスの質の向上につながり、顧客満足度も上がりやすくなります。

2.従業員満足度を調査する目的と質問項目

社内で従業員満足度を調査して、自社の現状をデータ化してみましょう。アンケート形式の調査によって、従業員満足度を数値化できます。ここでは、従業員満足度調査(ES調査)の目的や、具体的な質問項目をご紹介します。

1)従業員満足度調査(ES調査)の目的

従業員満足度を高める際には、満足度の現状把握とあわせて、従業員の人事・経営に対するニーズも把握します。
調査の実施によって、社内の課題を発見でき、その要因がわかれば経営陣は有効な解決策を検討しやすくなるでしょう。

また、調査によって従業員の率直な意見を引き出し、働き手の考えや価値観を可視化することも、調査の重要な目的の一つだといえます。そのため、従業員が本音で回答しやすいように、無記名式で実施するのがおすすめです。

さらには、従業員満足度調査を実施することそのものが、従業員へ向けたメッセージになるという側面もあります。調査を行うことで、社内環境を改善しようとする会社の意志を示せる点でも、実施には大きな意義があるといえるでしょう。

2)調査項目

①仕事への満足度
従業員の仕事に対する感じ方を調査するための項目です。自分の仕事内容や働き方に納得し、今後成長できる可能性があることが大切だといえます。従業員満足度調査には、以下のような設問を盛り込むと良いでしょう。

【設問の例】

  • 仕事の負荷は適正か?
  • 仕事にやりがいを感じているか?
  • 教育は充分か?

②職場への満足度
従業員の職場環境に対する感じ方を調査するための項目です。良好な人間関係により承認欲求が満たされ、チームに帰属意識を持ちながら、快適に働けているでしょうか。社内コミュニケーションを充実させて、メンバー間でフォローし合い、必要なサポートが得られることも大切です。以下のような設問で調査しましょう。

【設問の例】

  • 職場の人間関係は良好か?
  • 上司との関係は良好か?

③処遇への満足度
従業員自身の待遇への感じ方を調査するための項目です。自分の活躍やスキルに対して、報酬に納得感がある状態が理想的だといえます。以下の設問で、処遇について幅広い観点から調査しましょう。

【設問の例】

  • 給与に納得しているか?
  • 人事評価は適切か?
  • 労働時間に負担を感じていないか?
  • 休暇の取りやすさに問題がないか?

④メンタルヘルスの状態
従業員の悩みを把握し、心の健康を守るための項目です。仕事の不安やストレスから心身の調子を崩す従業員もいることから、社会でメンタルヘルス対策の重要性が高まっています。調査では、業務において過度なストレスが発生していないか質問すると良いでしょう。

【設問の例】

  • 職場での人間関係にストレスを感じているか?
  • 私生活でストレスを感じているか?

3)調査結果の分析

従業員満足度調査の実施後は、集計した調査結果を分析して、組織としての課題を発見するために活用しましょう。そして、見つかった課題に対する対策を検討し、改善を図ります。改善策の実行後に、再び調査を実施し、定期的に効果測定を行うようおすすめします。調査と改善を繰り返しながら、着実に従業員満足度の向上を目指し、一人ひとりが持てる力を発揮できる環境を実現しましょう。

3.従業員満足度を向上させる方法

従業員満足度を向上させるには、どのような施策を取り入れるべきでしょうか。最後に、自社の従業員満足度を改善するさまざまな取り組み方をご紹介します。

1)企業理念の共有

企業理念や経営方針、経営トップのビジョンなどの情報を社内で定期的に共有しましょう。自社にとって根幹となる考え方が広く浸透することで、組織に一体感が生まれます。組織が進むべき方向やそのために求める行動指針が明確になると、従業員は判断がしやすくなります。経営からメッセージを伝える機会を増やす、上司と部下の1on1で会社の方向性についてもふれるなど、対話の機会を増やすことでより浸透しやすくなります。

1on1ミーティングの詳細については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
→1on1ミーティングとは?効果を高めるコツと今すぐ使える質問例

2)職場環境の改善

現状の労働環境や労働条件の改善を図るなど、働きやすさを重視した施策も有効です。良好な職場環境を整備することは、従業員満足度の向上につながります。代表的な施策として、業務効率化による時間的な負担の削減が挙げられます。またテレワーク(在宅勤務)や副業解禁などをはじめとした働き方の選択肢を増やすことで、多様な従業員が自身の抱える環境やキャリアビジョンにあわせて長期的に働くことを考えやすくなります。それは、個々の従業員の満足度に繋がるでしょう。

3)業務内容の是正

一人ひとりの従業員の強みや能力に見合った仕事をアサインすることも重要です。各自の強みや適性に合う配置により、パフォーマンスを発揮しやすくなるだけでなく、仕事へのモチベーションも維持しやすくなるでしょう。

上司が部下に仕事を任せる際には、面談などを通じて、中長期的な視点に立って個々のメンバーとキャリアプランのすり合わせを行っていくこともあわせて重要になるでしょう。

4)コミュニケーションの促進

組織活性化には組織風土の醸成は不可欠です。組織全体で取り組む必要がありますが、従業員同士のコミュニケーションを活発にする施策はそのために有効な施策のひとつです。普段から上司と部下が定期的に面談を行うこともその一つとなるでしょう。更に社内イベントを開いて交流の機会を増やすことで、全体としてのコミュニケーションの活性化が期待できます。異なる部署の従業員同士を集めて、気軽に話せるランチを設定するなどもおすすめです。

5)人事評価制度の見直し

人事評価制度は、働く上での満足度に大きく関わります。従業員の能力や成果を適切に評価するための制度の構築と運用を実施しましょう。自分の取り組みや成果が適正に評価されていると実感できることは、モチベーション向上にも繋がります。場合によっては、各自の目標をオープンにして、従業員同士が連携してチームとしての成果を創出していく仕組みとすることも効果的です。

4.従業員満足度の向上で社内のモチベーションをアップ!

今回は、従業員満足度の基礎知識から、向上させる方法までお伝えしました。従業員満足度を向上させることで、個々人のモチベーションが高まり、生産性アップをはじめとした多くの効果が期待できます。組織全体の課題をつかむためにも、従業員満足度調査の実施は有効です。調査を通して出てきた状態から、何が解決すべき課題かを整理し適切な対策により、改善を繰り返していきましょう。

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この記事の編集担当

黄瀬 真理

黄瀬 真理

大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。

国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定

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