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自律型人材とは?キャリア自律調査から見えてきた育成する上での本質的な課題とは?

急速なグローバル化、デジタル化に加え、新型コロナウイルスのパンデミックなど、変動性が高く不確実で複雑な社会情勢が続くなか、働き方やキャリアを自らの意思で主体的に開発していく「自律型人材」の必要性が高まっています。
しかし、自律型人材の育成が急務であっても、自社の従業員のキャリア自律の状況が不明確なため、具体的にどのようなキャリア開発支援をおこなえばよいか悩む企業も多いのではないでしょうか。
本記事では、従業員のキャリア自律状況を数値で把握する「キャリア自律調査」を起点に自律型人材育成の本質的な課題を見つけるステップや、従業員の行動変容につながる「キャリア越境学習プログラム」について事例を交えながら、自律型人材育成についてご紹介します。

2021.09.01
コラム

自律型人材とは?

自律型人材とは、行動の意思決定を他者に委ねる指示待ちの人材とは異なり、自ら主体的に行動計画をたてて実行し、変化に対応しながら新たな価値や役割を創造していく人材です。いま多くの日本企業でこのようなキャリア開発意識を持った自律型人材が求められています。

なぜなら、前述のように変動性が高く不確実な社会では、これまでの成功体験や積み重ねてきた経験値が役に立たず、上司・経営層に聞いても「正解」は簡単に得られないためです。このような環境下では、従業員が自ら考え自律的に動ける組織になることが組織の生産性向上に直結します。

自律的に動くといっても、個々が好き勝手に動くという意味ではありません。企業のビジョンや経営目標を軸としながら、自らも社会のニーズを考え業務を遂行すること。それとあわせて仕事に意味を見いだし、新しい知識を学びながら積極的に活かすこと。そうした自律型人材の育成が急務になっているのです。

自律型人材の育成に必要なこととは?

自律型人材は皆さんの企業にも存在するでしょう。ただし、どのくらいの割合で自律型人材が存在するかは組織によってまちまちです。保守的な風土の企業の場合、指示待ち従業員の比率が高くなるかもしれません。

ここには従業員個々人の問題だけではなく企業ごとの人事制度や風土など環境的な要因も影響しています。従業員がこれまでの企業での環境に適応してきた結果とも考えられるのです。

自律型人材の育成において、従業員が自らキャリアを開発しようと意識し行動するための、企業側の環境整備や支援が重要です。その際には、単に施策を実施するだけではなく、「経営戦略」や「ビジョン」に基づいて、自社の「キャリア自律人材」について明確にすることが望ましいでしょう。

あわせて従業員のキャリア自律状況を把握することも必要です。現状を数値で把握し、本質的な課題を捉えた上で最適な施策を講じるステップを踏んでいくとよいでしょう。

事例1/「キャリア自律調査」で本質的な課題を把握

「キャリア自律調査」とは、従業員のキャリア自律度合いやそこに影響する要素を把握する時に有効です。一人ひとりの「仕事の充実感」「キャリアの展望」「職場での居場所感」「組織コミットメント」を数値で明確にし、キャリア自律の度合いがこの4項目にどのような影響を与えているのか把握します。

さらに、キャリア自律への「個人的要因」「環境的要因」「阻害要因」を把握することで企業内の問題のボトルネックを発見します。特定の層に課題がある(若手の離職など)場合は、その要因の把握に活用することも可能であり、調査結果を活用し、適切なキャリア支援の実施が可能になります。

以下に事例を紹介します。

組織名 ジェーシービー従業員組合
実施時期 2020年10月
目的 約3,500名の組合員が多様で自律的なキャリア形成ができる支援体制構築を目指し「キャリア自律調査」をオンラインで実施。支援体制を強化する前に本質的な課題を把握したい。

調査結果

  1. 「自己理解・前向きな態度」は全体的に高い
  2. 「職業的自己イメージの明確さ・主体的キャリア形成意識」は低い
  3. 「組織的キャリア支援」の度合いがキャリア自律(意識・行動)を高め、さらなるコミットメントと、職場の満足度に影響を与えることが判明

効果

上記のような調査結果から、組合のキャリア支援の方針や施策が、組合員の抱えているキャリア課題と合致していることを客観的な事実として示せた。それにより組合のキャリア支援の「軸」が強固になり、これから個々の施策の企画を進めるにあたっても、判断がしやすくなった。さらに、組合員にも施策の根拠をデータで示すことで理解促進につながった。

参照:キャリア開発支援体制構築を目指し、「キャリア自律調査」を実施 従業員組合による、組合員の多様で自律的なキャリア開発支援の取り組み

事例2/キャリア越境学習プログラムで「行動変容」につなげる

従業員が現在のキャリアに滞留し日常業務にマンネリ化が生じ、新しいアイデア・工夫が生まれにくい場合に有効なのが「キャリア越境学習プログラム」です。所属している職場と別の環境を往還(行き来)しながら業務に関するさまざまな内容を学習、内省します。

以下に、「キャリア越境学習プログラム」の事例を紹介します。

組織名 ボストン・サイエンティフィックジャパン株式会社
実施時期 2019年
目的 従業員の「視野の拡大」「自己のポータブルスキルの発見」「ダイバーシティの実践」「スモールビジネスの経営に触れることによる『視座の向上』」
概要 30~40代対象の年代別研修参加者から希望者を募り実施。多様な人材と協働できるプロジェクトに参画するなど従業員が実際に往還できる環境を提供。

結果

「これまで受けた研修で最も面白かった」「変化し続けていくことの必要性とさらなる貢献意識の高まりを得られた」「上下関係や決まった役割がない中での活動で『シェアードリーダーシップ』が発揮できた」など従業員から高評価が得られた。
「シェアードリーダーシップ」とは自らの強みを生かしつつ組織の成果の最大化に貢献することであり、参加者の多くにキャリアオーナーシップの向上が見られたことが最大の効果であった。

参照:キャリア開発 仕組・体制構築支援サービス キャリア越境学習プログラム

まとめ

これからの企業活動にとって重要なのは「自律型人材」の育成です。自律型人材を育成するには、現在の従業員のキャリア自律の状況を把握し、育成に向けた課題がどこにあるかを明確にすることが大切です。

そして、行動変容を促す研修やプログラムの導入は、従業員側も施策の必要性を理解した上で推進していく必要があります。

企業の従業員に対するキャリア自律支援は、従業員の働きがいや充実感を生み、組織コミットメントにもつながっていきます。企業と従業員の双方に大きなメリットがある自律型人材の育成を促進し、個人と組織の成長力向上につなげましょう。

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