多様で自律的なキャリア開発支援に取り組む従業員組合が、「キャリア自律調査」を実施

組合員のキャリア形成の本質的な課題を把握するために調査を実施

従業員組合として組合員の労働環境の実情に触れる中、キャリア環境の変化、個人の生き方や働き方の多様化などを背景に、キャリア形成に不安を覚える組合員が増えていることを感じていました。2019年に実施した組合員アンケートにおいても、その傾向が大きく見られたことから、従業員組合としてキャリア形成支援に取り組むことを決定。「キャリアデザイン研修」と「キャリアコンサルタント面談」を組み合わせた体系的なキャリア開発支援体制の構築を視野に入れ、ライフワークス(LW)に「キャリアコンサルタント面談」の実施を依頼しました。

LWにお願いした理由は、幅広い年代の社員を対象とした研修の実施、セルフ・キャリアドッグ導入支援などキャリアに関する多面的な取り組みの実績があり、豊富な知見をもとに提案をしてくださる姿勢に信頼を感じたからです。

当初、「キャリアコンサルタント面談」は2020年4月に実施する予定で準備を進めていましたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大で実施を断念せざるを得ない状況に。コロナ禍であっても、取り組みを少しでも進めたいとLWに相談したところ、組合員のキャリア意識を調査する「キャリア自律調査」を実施し、一連の施策のさらなる精度向上につなげてはとご提案をいただきました。

当組合では職場環境やキャリアに関するアンケートも毎年行っていますが、内容は組合員の主観的な認知・状況を確認するもの。他方、「キャリア自律調査」はキャリア自律の状況を定量化し、キャリア形成上の本質的な課題を抽出する調査であることに着目し、導入を決めました。

同調査では、キャリア自律の状況(キャリアに対する意識や行動)をレベルの高低とともに、「仕事の充実感」「キャリア展望」「職場の居場所感」「組織のコミットメント」の4要素の関わりで把握することができます。また、キャリア自律の状況を「個人的要因」「環境的要因」「阻害要因」の3要因から分析するため、問題要因を特定しやすいという特徴があります。こうした客観的な情報は、組合による施策の改善に役立つだけでなく、組織的課題について会社に改善を働きかけていく際にも説得力のある材料になると考えたわけです。

キャリア支援の方針や施策の根拠を組合員に示すことができた

2020年10月、今期活動方針の柱のひとつとして「多様で自律的なキャリア形成」を据え、「キャリア開発支援体制の構築」に向けて「キャリア自律調査」「キャリアデザイン研修」「キャリアコンサルタント面談」を「三位一体」で行なうことを宣言。2020年12月に全組合員を対象とした「キャリア自律調査」をオンラインで実施しました。

実施期間は2週間。より多くの組合員の回答を得るために社内メール、組合専用Webプラットフォームの2ルートで情報を告知。LWのアドバイスも得て、調査の目的や、回答によって個人情報が識別されないことを明記し、安心して答えてもらえるよう工夫しました。回答率は36.7パーセント。これまで実施してきた能力開発に関するアンケートと比較して遜色のない回答率でした。

「キャリア自律調査」で明らかになった、組合員のキャリア自律(意識・行動)を高めるためのポイントは大きく3つです。まず、組合員の「自己理解・前向きな態度」は全体的に高く、相対的に度合いが低い「職業的自己イメージの明確さ・主体的キャリア形成意識」を高めることで、自律的なキャリア開発を支援できることが確認できました。次に、「組織的キャリア支援」の度合いがキャリア自律(意識・行動)を高め、さらなるコミットメントと、職場の満足度に影響を与えることがわかりました。第三に、「ロールモデル」の存在・認知が30代以降の社員で低めであり、社内外の多様なコミュニケーションの機会を増やすことが積極的なネットワークや会社の満足度に影響を与えるという結果が出ています。

この3つはいずれも組合の活動計画や指針と合致するものであり、今後実施する施策や活動が組合員の抱えているキャリア課題に対応していることを証明でき、客観的事実として組合員に示せたことには大きな意義がありました。

キャリア自律調査の概要

調査目的の
イメージ
  • キャリア自律(意識・行動)と①仕事の充実感②キャリアの展望③職場での居場所感④組織コミットメントとの関係を見ることができる
  • キャリア自律自体を左右する【1】個人的要因【2】環境的要因 【3】阻害要因の状況を明らかにし、個人のキャリア自律と、組織へのコミットメントを向上させるにあたってのボトルネックを特定する
実施時期 2020年12月1日〜12月14日
調査対象・回答率 36.7%(1310名/3565名)
調査方法 オンライン

組合員のキャリア自律の「今」をリアルに把握できた

2021年3月末に実施する「キャリアデザイン研修」の企画は、「キャリア自律調査」の結果を踏まえて行い、組合員のキャリア自律に関する最新の傾向を具体的・論理的に研修内容に生かすことができました。4月初旬からは、LWによる「キャリアコンサルタント面談」も研修参加者を対象に実施します。

「キャリア自律調査」の最も大きな成果は、組合が実施するキャリア支援施策の根拠が明確になり、「多様で自律的なキャリア形成」という当組合のキャリア支援の軸がブレなくなったことです。調査を実施してみて驚いたのは、分析カテゴリーが緻密に設計されているがゆえに、組合員のキャリア自律の「今」がアウトプットにしっかりと反映されていることです。仕事に関わる因子だけでなく、「健康への不安」「ライフイベント」といった「ライフ」に関わる因子の状況が示され、因子間の関係性や世代ごとの傾向も分析できる調査構造なので、「この世代は健康への不安が仕事充実感に影響を与えている」といった組合員のリアルな姿が如実に現れるのです。

キャリア形成にはさまざまな要素が複雑に絡み合っていて、一人ひとりの物語があります。そうしたものを組織と関連づけた客観的な事実として把握する、「ツール」としての「キャリア自律調査」は非常に有効だと思います。研修など個々のキャリア支援施策のブラッシュアップに生かせるだけでなく、セルフキャリアドッグなどの総合的な仕組みづくりの検討にも役立ち、さまざまな可能性を感じる調査なので、継続的な実施を考えています。LWには当従業員組合のキャリア支援方針への深い理解に基づいた的確な提案をいただき、感謝しています。

この事例のまとめ

課題 キャリア支援施策を進める前に、本質的な課題を把握しておきたかった
組合員の多様で自律的なキャリア形成を支援する必要性を認識し、キャリア開発支援体制の構築を検討。事前に組合員のキャリア自律状況と本質的な課題を把握したかった。
方法 全組合員3565名を対象にオンラインで「キャリア自律調査」を実施
全組合員にアンケート調査を実施。キャリア形成上の課題を定量的に抽出し、その課題に対する打ち手や施策の方向性をアナリストが分析した調査結果を得た。
成果 キャリア支援の「軸」が強固に。方針や施策の根拠を組合員に示すこともできた
組合のキャリア支援の方針や施策が、組合員の抱えているキャリア課題と合致していることを客観的な事実として示せた。組合のキャリア支援の「軸」が強固になり、個々の施策の企画を進めるにあたっても、判断がしやすくなった。

取材日: 2021年3月25日

研修導入企業情報

ジェーシービー従業員組合 様

目的
ミドル・シニアの活性化 若手の成長支援・リテンション
年代
20代 30代 40代 50代
業界
保険・金融

企業のご担当者様

ジェーシービー従業員組合 執行委員長 斉藤 渉  様

ジェーシービー従業員組合
執行委員長
斉藤 渉 様

ジェーシービー従業員組合 書記長 阿部 幸織  様

ジェーシービー従業員組合
書記長
阿部 幸織 様

この事例をシェアする

ご相談・お問い合わせメルマガ登録他の事例も見る

この事例を見た人は、
こんな事例も見ています