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リテンションとは?離職防止や人材流出対策のために人事ができる具体的な取り組み事例

近年、企業は採用活動とともにリテンション(人材の定着)に戦略的に取り組むようになりました。少子高齢化が進むなか、とくに若手人材・中堅人材の人材市場が売り手優位となり採用が難しくなっただけでなく、人材採用後の「定着」の観点でも課題を抱える企業が増えていることが背景にあります。
では、若手人材・中堅人材に活躍してもらうには、どのような対策、取り組みが必要なのでしょうか?本記事では、リテンションの意味、具体的な施策、企業が行った具体的なリテンション施策の成功事例をあわせて紹介します。

2021.10.19
コラム

リテンションとは?鍵となるモチベーション低下防止策

リテンション(retention)とは「保持や維持」という意味で、人事領域で用いる際は、社員の離職を防止し、定着率を上げるための施策を指します。

企業では、採用後ある程度の割合で人材が自然減するものですが、流出が多い場合、新たな採用や育成にかかる費用・時間が増加するだけでなく、個々の社員の業務負担が大きくなり、生産性やモチベーションの低下が懸念されます。優秀な人材が競合他社に転職した場合、他社の戦力アップにもつながってしまいます。

特に若手人材・中堅人材の採用の獲得競争がますます激しくなるなか、採用した人材が離職してしまうのは大きな損失です。若手人材・中堅人材が定着し、長く活躍できる組織をつくるリテンション強化施策は、今や人事戦略において重要なテーマになっています。

人材に定着してもらうためには、いかに仕事に対するモチベーションを高く持ち続けてもらうかが鍵です。しかし、モチベーションの高い低いは個人差がありますし、モチベーションが低下してしまう理由も年代によって変化します。

年代別のモチベーションが低下する要因と人事がとれる施策についてはこちらの記事をご覧ください。実際に、社員のモチベーション低下を改善した企業事例もご紹介しています。

離職率や離職の原因は?

リテンション施策を考えるうえでまず持たなければならないのは、「早期離職はなぜ起こるのか」、という視点です。一般に辞める人材は、あまり退職理由を本音で語らない傾向があるため、ここでは外部の調査で離職の現状を確認してみましょう。

HR総研が2021年4月におこなった調査によると「自社の人材の離職率についての実感」について「適正な値」と回答した企業が25%、「低い」は18%、「非常に低い」は20%となっており、合計すると離職率を適正値以下に抑えられていると考える企業は63%です。

一方、離職率が「非常に高い」と回答した企業は4%、「高い」が29%で、合計すると適正値より高い離職率と感じている企業は33%です。

離職率の適正値は、業種や企業によって捉え方が異なると思われるものの、3割以上の企業が自社の離職率の高さに課題を感じていることがわかりました。

自社の人材の離職率についての実感(新入社員に限らず)
出典:HR総研:「人材定着の取り組み」に関するアンケート 調査報告

次に、早期離職の原因についての結果を見てみましょう。
離職原因のトップは38%の同率1位で「上司との人間関係」「業務内容のミスマッチ」です。次に「待遇(給与・福利厚生)」「同僚・先輩・後輩との人間関係」が続いています。多くの社員が組織の人間関係(特に上司)、業務内容、待遇に悩み離職したことがうかがえます。

離職の原因だと感じていること
出典:HR総研:「人材定着の取り組み」に関するアンケート 調査報告

人事ができるリテンション強化の取り組みとは?

本調査によると、離職理由の2トップが「人間関係」「仕事とのミスマッチ」です。この傾向は若手人材・中堅人材の早期離職にも当てはまると想定されます。とすると、社内コミュニケーションのあり方など職場風土を含めた環境整備は離職防止の観点で重要なことがわかります。

具体的なリテンション施策には以下が挙げられます。

1.働き方の選択肢の拡大

  • フレックスタイム・テレワーク・リモートワークの推進
  • 育児・介護などの際の時短勤務
  • 有給休暇を取りやすい、適正な残業といった環境づくり
  • 副業の認可

2.コミュニケーションの促進

  • メンター制度などの導入による社員が孤独にならないような配慮
  • 社内SNSやチャットなどを活用した社員同士のコミュニケーション促進
  • レクリエーションなどを通した互いを知る機会の提供
  • コミュニケーションスペースの設置
  • フリーアドレス制の導入

3.キャリア支援

  • キャリア研修などを活用し、未来に向けたキャリアデザイン支援
  • 上司とメンバー間でのキャリア面談の活用
  • 1on1を通した個々への伴走
  • FA制度を活用した成長機会の提供

4.自律を促す制度設計

  • 社内公募制度やFA制度の活用
  • 年齢にかかわらず成果が評価される昇給・昇格制度
  • 公平で透明性のある評価制度

なかでも個々人に向き合う施策として取り入れられることが多いキャリア面談は社員の長期的な成長を支援するために行うものであり、押さえるべきポイントがあります。面談シートを活用した適切な問いかけにより、キャリア構築について建設的に話し合えるようにしましょう。

離職防止のリテンション施策事例

ここではリテンション施策事例として、若手人材・中堅人材が定着する職場づくりに成功した企業事例を複数紹介します。

事例1:30代がキャリア開発行動計画を立て実現に向けて動く仕組みづくりの一歩を踏み出した「株式会社日立ソリューションズ様」の事例

株式会社日立ソリューションズでは、社員のキャリア開発を積極的に支援していましたが、入社から数年ほどたつと、新たな領域にチャレンジすることをためらう社員が増えることが課題でした。対策として30才と35才を節目にキャリア研修を新設しました。

施策
  • 30才向けには、研修を通して会社からの期待を伝える。個々の社員が自己の特徴・強みの棚卸しをする。さらに会社が目指して欲しい人材像の定義「日立ITプロフェッショナル認定制度」「グローバル人財制度」や必須研修制度などを周知し、自身でキャリア形成の目標を描いてもらう。
  • 35才向けには30才の時に立てた目標と現実とのギャップを確認し、環境変化を加味し新たな目標・行動計画を描いてもらう。
効果

ビジネス環境の変化、会社からの期待を理解し、あわせて多面的な自己の棚卸しをすることによって、社員一人ひとりが新たな気づきを得ることができました。将来めざしたい自分の姿と会社の求める人材像を踏まえた新たな目標に向けてキャリア開発行動計画を立て、上長と共有することで、一歩を踏み出すしかけづくりができました。

関連記事はこちら:「株式会社日立ソリューションズ様」の導入事例

事例2:キャリアに対する意識を若手人材とその上司双方に意識づけた「サービス業I社」の事例

20~30代の社員が多いサービス業のI社では、年1回の従業員満足度調査で「事業」「上司・同僚との人間関係」「働きやすさ」の項目は非常に満足度が高い一方、「キャリアに対する意識」の項目は満足度が低い結果が出ていました。若手人材が目の前の業務に追われて目的意識を見失ってしまい、モチベーションが低下している傾向が出ていたのです。対策として若手人材向けのキャリア研修と、管理職向けのキャリア支援のための研修を実施しました。

施策
  • 20~30代社員に対し、キャリア自律意識と会社への帰属意識を高める目的でキャリア研修を実施
  • 管理職に対し、キャリアやコーチングについて座学とロールプレイングを盛り込んだ研修を実施
効果

若手人材の多くが、働くことやI社でのキャリアについて前向きな思いを抱く結果になりました。受講中のフィードバックを通じ「自分の強みに気づき自信がもてた」「上司からの期待を感じた」などの感想がみられ、自己効力感の高まりやエンゲージメントの向上がみられました。

管理職研修では、ロールプレイングを通じて「部下よりも自分が話しすぎる」「聞き役になりきれていない」などの課題に気づき、キャリア面談の実施を自分ごととしてとらえる管理職が多くみられました。また、若手管理職にとっては「キャリア」についての各種理論からキャリア支援の基礎を学ぶ良い機会となったようです。

関連記事はこちら:「サービス業I社」の導入事例

事例3:離職者数を1/5に低下させた「株式会社ホットランド」の事例

(参考:若者が定着する職場づくり取組事例集 - 厚生労働省

株式会社ホットランドは、店舗数を急速に拡大してきたため、常に出店に人材確保が間に合わないという状態が続いていました。店長教育やフォロー体制がおざなりになり、結果として、若手人材の定着率が低いという課題がありました。対策として、出店計画に基づいた採用計画の策定・実施を徹底するとともに、早期離職要因をコンサルタントが現場調査した結果をもとに以下の3施策を導入しました。

施策
  • 新入社員の孤立を回避するための人事部フォロー、個別面談の実施
  • 新入社員の横の連携を深め帰属意識を高めるために集合研修を実施
  • 退職者に対する退職面談を実施
効果

新入社員の離職者数が減少。2016年は17人中5人が1年以内で退職していましたが、2017年は11月時点で15人中1人のみの退社と改善が見られました。

まとめ

企業が継続的に成長していくには、活力をもっていきいきと働く社員の存在が欠かせません。特に、若手人材・中堅人材は企業の将来を担う重要な人材です。若手人材・中堅人材の離職増加は企業の将来に影響を及ぼす重要事項だといえるでしょう。

人材の流出を防ぎ離職率を低下させるためには、まず自社の離職率が高い原因を特定することが大切です。その上で、最も大きな原因をとりのぞく、または影響を軽減する施策を検討・実施していきましょう。

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