若手社員向けキャリア研修と、管理職がキャリアを支援する研修を同時に実施

若手社員(20・30歳代)のキャリア自律支援をしたい

間もなく設立20年を迎えるサービス業のI社。社員に占める20・30歳代の割合が高く、この世代の事業貢献度が、さらなる事業拡大に向けて大きな鍵を握っていました。

ところが、年1回の社員の満足度調査において、「事業」そのものや「上司・同僚との人間関係」「働きやすさ」などの項目では満足度が非常に高い一方、「キャリアに対する意識」の項目において満足度が低いという結果が出ていました。さらに、若手社員に見られる傾向として、事業に共感し、志を持って入社してきたにもかかわらず、目の前の業務に追われて目的意識ややりたかったことを見失い、モチベーションの低下が起こっていることがうかがえました。

そこで、20・30歳代社員のキャリア自律意識と、会社への帰属意識を高めるための施策として、この世代を対象としたキャリア研修を行いたい、さらには、上司である部課長に対しても、部下のキャリアを支援する意識を醸成し、部下のキャリアに対する意思や考えを受け止め、導くことができるだけのスキルを身につけられる研修を行いたいという意向をI社の人事部が持たれ、ライフワークスにお声がけいただきました。

なお、管理職向けの研修も行いたいという意向を人事部が持たれた背景には、I社が設立から20年弱という若い組織であり、プレーヤーとして結果を出してきた社員がそのまま管理職についていたり、中には30代の課長がいたりと、部下のキャリアを支援する視点や具体的なアプローチ方法をこれまで学ぶ機会がなかった管理職が多いことに課題感を持たれていたからでした。

若手社員向けのキャリア研修と、管理職向けのキャリア支援のための研修を実施

若手社員向けの研修については、I社から次の3つの要望をいただきました。1)入社時に持っていた志を思い起こさせてほしい、2)「キャリアは自発的に考えるもの」という意識を持たせてほしい、3)その上で、この会社でどのように働き、キャリアを重ねていくかということを考えてもらって帰属意識を高めたい。また、管理職向け研修についても、「コーチングやキャリアに関する理論など、インプットを多めにしつつ、実践的な内容も入れてほしい」というご要望をいただきました。

これらを基に、若手社員向け研修は、まずは自らの原点や人生における価値観を思い出すとともに、自分が今働いている意味を考えるワークを行って「will」を確認した上で、自分の持ち味・強み、すなわち「can」を洗い出し、上司からのメッセージなどで「must」を確認するという手順でwill・can・mustを整理するというプロセスを経て、その上で、自分のありたい姿を実現するための「この会社でのこれからのキャリアプラン」を考えるという研修を設計しました。

そして、管理職向け研修は、コーチングの手法や理論、キャリアに関する理論を学ぶ時間を厚めにとりつつ、2種類のロールプレイングを盛り込み、部下との日々のコミュニケーションの取り方とキャリア支援の仕方の両方を学べる研修を設計しました。ロールプレイングでは、I社の20代社員を想定してプロフィールやキャリアへの意識などを詳細に設定した事例をもとに、受講者が若手社員役と管理職役になってキャリア面談を行うという形で行い、終了後には若手社員役から管理職役にフィードバックも行いました。

若手社員と管理職双方のキャリア自律に対する意識が高まった

若手社員向け研修においては、受講者の多くが、働くことや今後のI社でのキャリアについて前向きに考え、「これからも頑張っていこう」という思いに至る結果となりました。will・can・mustを整理していくプロセスの中で、「自分の志向が整理できた」「自分には目立った特徴はないと思っていたが、ほかの受講者からフィードバックを受けたことで強みに気づくことができ、自信になった」「上司からの期待を感じた」などの感想が挙がり、自己効力感の高まりや、受講者同士のエンゲージメントの高まりも見られました。

管理職向け研修においては、理論の学習以上に、ロールプレイングに大きな反響がありました。具体的には、「部下よりも自分が話すぎる」「聞き役になりきれない」など、実践してみることで自身の課題に気づいたり、キャリア面談を行う際の注意点を自分ごととしてとらえることができたりした管理職も多いようでした。また、各種理論に関しては、とくに若手管理職にとっては初めて学ぶことが多く、良い機会になったようです。

また、これらの研修を実施するにあたって、I社で四半期に1回、上司と部下の1対1で行われている目標管理面談のスケジュールをふまえて、管理職向け研修→目標管理面談(目標管理に重きを置いた回)→若手社員向け研修→目標管理面談(キャリア面談に重きを置いた回)という流れで実施したことで、若手社員は研修で考えた今後のキャリアについて上司に話す機会を得ることができ、また、管理職も研修での学びを生かして面談で若手社員を受け止める、という流れを作ることができました。

社員のキャリア自律意識を醸成するにあたっては、上司の側にその意識を受け止め、支援する態勢が不可欠です。I社においては、上司と部下の研修を一連のものとして実施することで、キャリアに対する意識を上司・部下双方に意識づけできたという点で、非常に効果的な取り組みになったと感じています。

この事例のまとめ

課題 20・30歳代社員のキャリア自律意識と会社への帰属意識を高めたい
20・30歳代の社員に、目の前の業務に追われるだけでなく、入社当初の目的意識を思い起こし、今後のキャリアについて自ら考え、モチベーションを高めてもらいたい。それにより、事業へのさらなる貢献を期待したい。
方法 若手社員と管理職双方に研修を行い、キャリア自律意識やキャリア支援意識を醸成
若手社員に対して、持っていた志を思い起こし、今後のキャリアを考える研修を、管理職に対して、コーチング手法やキャリアに関する理論を学ぶ研修を実施。若手社員のキャリア自律意識を高め、それを上司が受け止められる態勢づくりを目指す。
成果 若手社員と管理職双方が、キャリア自律に対する意識を高めることができた
若手社員はキャリアを前向きに考え、管理職は部下とのコミュニケーションを見直す機会となり、研修を通して若手社員が高めたキャリアへの意識を現場に持ち帰った際、上司が受け止められる状況をつくることができた。

取材日: 2018年12月7日

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20代 30代
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