【事例付き】ウェルビーイングとは?企業が取り組む必要性とメリット

自社の従業員は、心身の健康状態を良好に保ち、日々幸せを実感しながら働き続けることができているでしょうか。近年のビジネスシーンでは、従業員の幸福や健康を含む「ウェルネス」に着目し、職場環境を見直す取り組みが始まっています。従業員が置かれた状況を把握し、より良い働き方ができる組織を目指しましょう。

本記事では、ウェルビーイングの基礎知識から、企業が取り組む必要性、メリットまで解説します。

2022.07.21
コラム

ウェルビーイングとは?

初めに、ビジネスシーンで注目される「ウェルビーイング」の基礎知識を解説します。意味や定義といった基本を確認し、似ている用語との違いもお伝えするため、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。

ウェルビーイングの意味と定義

ウェルビーイングは、直訳すると「幸福」や「健康」を意味します。厚生労働省の定義では「個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念」とされています。

【出典】 「雇用政策研究会報告書 概要(案)」(厚生労働省)

ウェルビーイングの歴史

ウェルビーイングの概念は、1946年の世界保健機構の設立時に考案された憲章内の文章で、初めて言及されました。憲章の考案者は、世界保健機構の設立者の一人である施思明(スーミン・スー)です。病気の予防や治療だけではなく、健康促進の重要性を主張するために考案されました。

なお、世界保健機構における定義では、ウェルビーイングは「Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.(健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。)」と表現されています。

【出典】 「世界保健機関(WHO)憲章とは」(世界保健機構)

ウェルビーイングを構成する5つの要素

  • Career well-being(キャリア ウェルビーイング)
    人生や生活の意味も含む、広義のキャリアにおいて健康や幸福を追求することを指します。これは、仕事におけるスキルや経験、職場選びに限定する話ではありません。プライベートや家庭における趣味や勉強、家事や育児なども含まれます。「ワークライフバランス」に近い意味で使われる要素です。
  • Social well-being(ソーシャル ウェルビーイング)
    身の回りにいる他者と良好な関係性を築き上げて、人間関係の幸福を追求することを指します。そこでは、人との間に育まれる愛情や信頼といった要素が非常に重要です。単なる交友関係の広さだけでなく、人と人とのつながりで生まれる幸福感が重視されます。職場においても、同僚や上司・部下との信頼関係を醸成できると理想的です。
  • Financial well-being(フィナンシャル ウェルビーイング)
    自分で報酬を得る手段を持ち、経済的な幸福を追求することを指します。十分な報酬を得て安心して生活したり、経済的な満足感を得たりできるのが大切です。また、自身の資産を適切に管理・運用できることも幸せに関わります。仕事においては、現状の報酬に納得できているかがポイントとなるでしょう。
  • Physical well-being(フィジカル ウェルビーイング)
    健康な身体を維持し、身体的な幸福を追求することを指します。自身が希望する活動を続けるためには、ポジティブなマインドや、行動を実行するエネルギーがなくてはなりません。身体の健康増進は、仕事や趣味の体験を充実させることにつながります。仕事のモチベーションとも関わる部分です。
  • Community well-being(コミュニティ ウェルビーイング)
    地域社会をはじめとした身近なコミュニティにおける幸福を追求することを指します。たとえば、地域にある学校や親戚関係などのコミュニティも含まれます。職場もコミュニティの一つといえるでしょう。こうした多様なコミュニティとの関わりを持ち、つながりを実感することで、幸福感がもたらされます。

ウェルビーイングと健康経営の違い

ウェルビーイング ウェルビーイング経営 健康経営
言葉の具体性 抽象的な概念 具体的な計画や手段 具体的な計画や手段
対象の範囲 社会的な健康まで含む 社会的な健康まで含む 心身の健康を重視する
行動の主体 すべての人 主に企業の経営に関わる人 主に企業の経営に関わる人

「ウェルビーイング」と「健康経営」の用語は混同して使われることがありますが、言葉の具体性に違いがあります。ウェルビーイングは抽象的な概念である一方で、健康経営は具体的な経営手法の一つです。ウェルビーイングを追求する経営は「ウェルビーイング経営」と呼ばれます。

経済産業省による健康経営の定義は「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」とされています。健康経営とウェルビーイング経営は、主に追求する健康の範囲が異なるといえるでしょう。

ウェルビーイング経営では、社会的健康を含めた広範囲の健康(=ウェルネス)を追求するのが特徴です。社会的健康とは、他人と健全で良い関係性を築けている状態を指します。健康経営は主に心身の健康(=ヘルス)を追求する経営方針である点で、ウェルビーイング経営と異なります。

【出典】 「健康経営」(経済産業省)

ウェルビーイングが注目されている背景

  • 働き方改革が推進されている
    働き方改革は、厚生労働省によって2019年4月から実施されている施策です。主な取り組み内容として、長時間労働の是正や柔軟な働き方の推進などが挙げられます。

    働き方改革の実現には、ウェルビーイングに含まれる社会的な充足も欠かせません。その理由は、働き方改革の目標の一つに「働く人、一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすること」があるためです。

  • SDGsが注目されている
    SDGs(持続可能な開発目標)とは、2015年に国連サミットで採択された国際目標です。

    SDGsの目標の一つに「すべての人に健康と福祉を」が含まれています。加えて「包摂的かつ持続可能な経済成長及び全ての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する」という目標も設定されています。

    SDGsの具体的な取り組み例は、権利の保障や十分な収入、柔軟なワークスタイルの実現などです。日本国内に限らず世界でウェルビーイングが求められている状況にあります。
  • ダイバーシティが浸透している
    近年のビジネスシーンでは、多様な価値観やバックグラウンドを持った人が協働する機会が増えています。日本企業の海外進出や国内の外国人労働者増加などが主な理由です。性別や国籍、性格や価値観、障害の有無や働き方など、異なる要素を持つ人たちが同じ職場で働くケースも珍しくありません。

    こうした背景から、多様な人が尊重し合い、各自の能力を生かす「ダイバーシティ&インクルージョン」が重視されるようになりました。企業にとっても多様性を尊重する経営方針や取り組みが重要です。

  • 働く期間が長期化している
    生涯のなかで働く期間が長くなった結果、ビジネスパーソンが未曾有の変化に直面する機会が増えています。こうした状況から、「働くこと」と「生きること」が共に考えられるようになりました。それにより、今後のキャリアについて考えるとき、自己実現や身体・精神の健康、幸せなどを大切にする人が多くなっています。

企業がウェルビーイングに取り組むメリット

企業がウェルビーイングの施策に取り組むと、どのようなメリットが期待できるのでしょうか。自社が得られるメリットについてお伝えします。

従業員の満足度や業績が向上する

ウェルビーイングな働き方が実現できると、仕事に対するやりがいを感じることでモチベーションを高められるのがメリットです。従業員の主体性やパフォーマンスが高まり、組織の生産性アップにつながります。そうした状態でいられると、人生の意味や意義を見いだしやすくなり、従業員の幸福度が高まります。

また、ウェルビーイングへの取り組みで従業員の心身が安定しやすくなれば、健康上の効果も期待できるでしょう。心身の健康上の理由による離職を防止するだけでなく、自社への帰属意識が育まれ、エンゲージメントの向上が可能です。

優秀な人材の確保ができる

ウェルビーイングを重視する企業は、求職者にとって魅力的に映りやすいといえます。企業イメージの向上にともない、優秀な人材の確保が期待できるでしょう。

近年は人材獲得の競争が激化しています。労働人口の減少や、個人の価値観の多様化などを背景に、人材の流動性が高まっているためです。企業が積極的に自社の魅力を高める必要がある中で、ウェルビーイングの施策が有効な施策のひとつとされています。

ウェルビーイングを高める施策の具体例

最後に、従業員のウェルビーイングを高める施策をご紹介します。テレワークの普及により、オンラインだからこそ実施できるウェルビーイング施策も多くなりました。ぜひ導入をご検討ください。

コミュニケーションを促進する

  • 重要な理由
    社内のコミュニケーションが円滑になると、職場における人間関係や仕事の悩みが解消されやすくなることから、ウェルビーイングが高まると考えられています。従業員同士の交流や連携を活性化させる施策を導入すると良いでしょう。
  • 施策の具体例
    コミュニケーション促進には、1on1の導入も有効だと考えられます。1on1とはメンバーの成長を目的に行われる1対1のミーティングのことです。業務遂行のために目標や成果を確認する面談とは異なり、業務に関する評価や判断などは行いません。上司と部下が互いの考え方や価値観を知る機会になり、心理的安全性の担保にもつながる施策です。

    また、メンター制度でもコミュニケーションの促進が期待できます。メンター制度とは、先輩社員が新入社員や若手社員に対して仕事のアドバイスをしたり、相談に乗ったりする制度です。悩みを早期解決できる体制を作り、組織の横のつながりを強化できます。従業員が一人で悩みを抱えないようサポートを提供し、早期離職の防止にもつながる施策です。

労働環境を改善する

  • 重要な理由
    従業員が持続的に働くには、良好な労働環境の維持が欠かせません。2020年以降は新型コロナウイルス感染拡大にともない、テレワークを導入する企業が多くなりました。労働環境に大きな変化がもたらされ、新たなウェルビーイング向上の施策が求められています。
  • 施策の具体例
    テレワーク関連の補助金・助成金を活用して、業務で役立つ機器やソフトウェアを導入すると、労働環境の改善が期待できます。テレワーク体制の充実化をはかり、従業員が快適に業務へ取り組める環境を整備しましょう。

    多様な働き方を実現するために、育児サポートの施策を講じるのも有効です。社内に託児所や保育所を設置すると、育児と仕事の両立を叶えやすくなります。従業員の働きやすさが向上し、働き手から見た企業の魅力が高まるのもポイントです。

福利厚生を充実させる

  • 重要な理由
    福利厚生は、給与・賞与以外で従業員に与えられる報酬です。企業が独自に提供する法定外福利厚生は、働きがいにも寄与し、ウェルビーイングの観点でも効果が期待できます。魅力あるサービスを用意することで、従業員の帰属意識を高められます。
  • 施策の具体例
    従業員の健康維持に役立てられる、セルフチェック・セルフケアの仕組みを作ると良いでしょう。たとえば、健康管理システムを導入すれば、テレワーク体制でもオンラインで健康面のサポートを提供できるようになります。

    栄養バランスが考慮された食事補助の導入もおすすめです。社員食堂やオフィスへの食事配送サービスだけでなく、従業員にチケットを配布する方法もあります。全国各地の飲食店で利用できるチケット制の食事補助は、テレワークでも利用可能です。

ウェルビーイングを高めて働きがいのある企業を目指しましょう

ここまでウェルビーイングについて解説しました。国内外のビジネスシーンでは、働き方改革の推進やSDGsの採択などを背景に、ウェルビーイングへの注目が高まっています。企業がウェルビーイング向上へ取り組むと、従業員の満足度向上や業績向上、人材確保などのメリットが期待できます。ご紹介した具体例を参考に、自社に適したウェルビーイングの施策を検討し、従業員が健康や幸福を実感しながらイキイキと働ける企業を目指しましょう。

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