モチベーションマネジメントとは?メリットや成功のためのコツを解説

管理職としてマネジメントに携わるようになると、部下のモチベーションが仕事の質に直結することを実感する人も多いでしょう。
会社の利益や成果を高め、経営目標の達成につなげるには、従業員一人ひとりが仕事に対して主体的・積極的に取り組む風土の醸成が欠かせません。しかし、仕事に対するモチベーションは目に見えないため、適切な働きかけが難しいのも事実です。

今回は、モチベーションマネジメントの概要やメリットのほか、モチベーションマネジメントを成功させるためのコツなどについて解説します。

2023.05.11
コラム

1.モチベーションマネジメントはモチベーションで従業員のパフォーマンスを高める手法

モチベーションマネジメントとは、従業員のモチベーションに働きかけ、高いパフォーマンスを継続的に発揮できるようにサポートするマネジメント手法のことです。対象となる従業員の仕事に対する意欲ややる気の源を把握し、適切な働きかけによって士気を高めます。
モチベーションマネジメントは、従業員一人ひとりに合った対応を行うことで、離職防止やスキルの向上につながるといわれています。

2.モチベーションの種類

モチベーションとは、一般的には、何らかの目的を持って物事に取り組む際の意欲ややる気のことを指します。目的を達成したいという強い思いと、それに伴う行動の原動力ともいえるでしょう。モチベーションは、仕事だけでなくスポーツや勉強などに取り組む際にも使われる概念です。

モチベーションの種類は、モチベーションが何によって高まるかによって内発的動機づけと外発的動機づけの2つに分けることができます。それぞれについて、詳しく説明します。

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1)内発的動機づけ

内発的動機づけは、従業員自身の内側から湧き出す強い好奇心や探求心によって行う動機づけのことです。仕事そのものに対する興味関心、自分の成長や会社の成長に対する欲求、仕事を通して感じるやりがいなどが該当します。他者からの強制を伴わないため、従業員は自発的に仕事に取り組み、仕事の質を高める工夫をするようになるでしょう。
副業の促進、得意分野に応じた職務の割り振り、裁量権の拡大、公正な評価とフィードバックなどによって内発的動機づけを行うことができます。短期的な成果は見込めませんが、持続性が高く、従業員のパフォーマンスの最大化につながります。

仕事のやりがいの詳細については、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
→仕事のやりがいとは?従業員が感じる瞬間と自分で見つける方法

2)外発的動機づけ

外発的動機づけは、外部要因によって目的意識を高める動機づけのことです。「報酬を得たい」「罰則を受けたくない」といった外部からもたらされる目的を実現するために行動することを指します。
誰にでも適用でき、すぐに行動を変容させて成果を得ることができる一方、持続性は低く、常により強い動機づけによって行動を継続させなくてはなりません。また、内面の成長にはつながりにくいでしょう。

3.モチベーションが低下する原因

効果的なモチベーションマネジメントを行うには、従業員のモチベーションが低下している原因を把握し、向上させる方法を検討する必要があります。
ここでは、モチベーションが低下する主な原因について説明します。

1)評価や待遇への不満

評価や待遇への不満があると、従業員のモチベーションが下がる場合があります。
人事考課や人事評価などの評価制度は、一定期間の会社への貢献度を客観的に分析し、昇給・昇格の査定、年収の見直しなどにつなげるための制度です。発揮した能力や残した業績に対する会社の受け止め方が反映されるため、納得できる評価が受けられるかどうかは従業員にとって非常に重要なポイントです。
「正当な評価がされていない」、「待遇が不公平」などといった不満が募ると、従業員は会社に貢献する意欲を失います。

2)人間関係への不満

人間関係への不満があると、従業員のモチベーションは下がりやすくなります。
組織で共に働く仲間と良い関係を構築することは、仕事を円滑に進めるためにも、ストレスを溜めずに働くためにも欠かせないポイントです。ところが実際には、相性の悪い先輩がいたり、上司に指摘されたことを理不尽に感じたりと、職場環境がモチベーションに影響していることが少なくありません。上司や同僚との人間関係の良し悪しは、従業員が働くモチベーションとも密接に関連しているのです。

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→日本水産株式会社 「自立と自律」を人事ポリシーに、社員の状況を定量で把握しながらキャリア自律支援に注力

3)仕事内容への不満

入社前に想定していた仕事と現実の業務にギャップがあったり、裁量権がなく他者に与える影響が少ない仕事だと感じていたりするなど、自身が希望する仕事と与えられた仕事とが一致しないために仕事内容への不満を感じていると、従業員がモチベーションを下げてしまう場合があります。これは、自認する労働スキルと現状の客観的な労働スキルが乖離しているために、発生する不満です。
そのような不満を抱き、従業員が改善を希望した際、会社に対して希望の申し出すら聞き入れてもらえない印象を受けたり、仕事内容に対する説明が不十分で納得できない状況が続いたりすると、会社に対する期待とともに労働意欲も薄れていくでしょう。

4)将来に対する不安感

将来に対する不安感も、従業員のモチベーションを下げる一因です。業績が悪化していて先行きが不透明な会社や、公平な評価制度が導入されていない会社では、従業員は安心して仕事をすることができません。会社全体に不安感が漂っている場合、従業員は将来に対する不安が募り、目先の仕事に集中できなくなってしまうでしょう。

5)身体的疲労の蓄積

体の疲れの蓄積も、従業員のモチベーションを低下させる原因のひとつです。残業や休日出勤が続いて疲労が溜まってくると、前向きな気持ちを維持するのが難しくなります。スポーツなどでの心地よい疲れとは異なり、仕事の疲れには精神的なダメージも影響していることも多く、じわじわと従業員の体と心の健康を蝕んでモチベーションを奪っていくでしょう。

4.モチベーションマネジメントのメリット

モチベーションが低下した従業員に対してモチベーションマネジメントを行うと、どのような効果があるのでしょうか。
ここでは、モチベーションマネジメントの代表的なメリットを3つ紹介します。

1)生産性が向上する

従業員の生産性が向上する点は、モチベーションマネジメントのメリットです。モチベーションマネジメントが奏功すると、従業員は能動的に仕事に取り組み、自分と組織の目標に向かって自走するようになります。結果として、少ないリソースでも高いパフォーマンスを発揮できるようになるでしょう。
こうした状態の従業員が増えれば、組織全体の生産性が向上します。

2)従業員の自己成長につながる

モチベーションマネジメントを行うことで、従業員の自己成長を促すことができます。高いモチベーションを維持している従業員は、ひとつの目標達成に満足せず、自身の付加価値を高め、できることを増やすために自ら学習し、自己成長を追求するようになります。より高い目標を達成するために部署を超えた連携を提案するなど、組織への貢献度も高まるでしょう。

3)離職のリスクが抑えられる

離職のリスクが抑えられる点も、モチベーションマネジメントのメリットです。モチベーションが高い従業員は、事業成長や経営目標を意識して仕事をする傾向にあります。会社へのエンゲージメントが高く、簡単に離職を選ぶケースは少ないでしょう。

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5.モチベーションマネジメントを成功させるためのコツ

モチベーションマネジメントを成功させるためには、どのような工夫が必要なのでしょうか。
ここでは、モチベーションマネジメントを成功させるための実践するコツを紹介します。

1)従業員の声を真摯に聞く

従業員からの意見を真摯に聞くことは、モチベーションマネジメントを成功させるコツのひとつです。
モチベーションマネジメントを実践するには、モチベーションマネジメントを行う上長をはじめとするさまざまな人と従業員との双方のコミュニケーションが欠かせません。従業員が何にストレスを感じているのか、どんなキャリアを描いているのかといった現状を深く理解していなければ、適切なマネジメントはできないからです。

特に、達成目標や人員配置においては、その人の能力やスキルを踏まえた納得感のある設定が重要です。会社側の一方的な指示で高すぎる目標を設定されたり、本人が納得できていない状況で希望していない部署に配属されたりすると、従業員のモチベーションは著しく低下します。すべての希望を叶えるのは現実的ではありませんが、従業員の意見を聞き、納得できる落としどころを探る姿勢が求められます。
管理職が従業員に歩み寄り、状況を理解しようとすることで、従業員の信頼感や安心感の醸成にもつながるでしょう。

2)働く目的を明確にし、目的を実現するための指針を示す

従業員が働く目的を明確にしたり、その目的を実現するための指針を示したりすることも、モチベーションマネジメントを成功させるためのコツです。
「仕事の成果が実感できない」「求められる目標をなかなか達成できず、自分の存在意義がわからなくなった」といった状態が続くと、従業員は働く意味を見失います。この状態から抜け出すには、成功体験により感じる 満足感、目標を達成したときの達成感、頼りにされたときに満たされる承認欲求など、内発的動機づけにつながる感情を意識した施策が有効です。

従業員の気持ちに寄り添って話を聞くとともに、その人のスキルを最も発揮できる職務を検討することで、従業員にとっての働く目的を明確にするための手助けをしましょう。併せて、目的達成のために会社ができるサポートを示すことで、会社へのエンゲージメントも高めることができます。具体的には、資格取得の支援や部署異動による新たな環境の提供などが考えられます。

3)定期的にモチベーションを確認する

モチベーションマネジメントを行う際には、定期的に、従業員一人ひとりのモチベーションを確認することが大切です。モチベーションは常に一定ではなく、内的要因や外的要因によって左右されるものです。日常的な雑談ベースのコミュニケーションで従業員の心身の状態をそれとなく把握するほか、定期的なミーティングで本人の声を聞くようにしましょう。
定期的なコミュニケーションは、1on1ミーティングで行うことも効果的です。これは、互いを知り、忌憚のない意見や考えを言い合うことを通して相互理解が進むことで、相手に対する理解が深まるためです。個々に時間をかけて話を聞くことで、信頼関係を強化する効果もあります。
また、1on1で知った従業員の価値観や思考をふまえて、状況に応じて外発的・内発的な動機づけをすることで、モチベーションの向上と維持を実現できます。

4)従業員同士が認め合い、ほめ合う風土を作る

同じ会社で働く従業員同士が認め合い、ほめ合う風土を作ることも、モチベーションマネジメントを成功させるコツのひとつです。
働く人の多くは、仕事のプロセスや成果を評価してもらいたいという承認欲求を持っています。承認欲求を満たす代表的な施策には昇進や昇格、昇給などの評価制度がありますが、従業員同士が互いの仕事に関心を持ち、成果やプロセスにフィードバックし合う習慣があればより満足度が高まるはずです。
従業員同士でフィードバックを送り合うということは、それぞれが自分の仕事と仲間の仕事に誇りを持ち、尊敬し合える関係であるということです。こうした風土がある会社は、良いことだけでなく改善すべき点のフィードバックも盛んでしょう。働きやすく、成長しやすい環境を従業員みずからが作り出し、モチベーションを高め合うことが期待できます。

6.モチベーションマネジメントで、成長する組織を作ろう

モチベーションマネジメントは、従業員一人ひとりの能力を向上させ、成長し続ける組織を生み出します。モチベーションマネジメントを実践する際には、マネジメントを担当する部下の心身の状況を把握し、モチベーションの源を見つけて働きかけましょう。

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この記事の編集担当

黄瀬 真理

黄瀬 真理

大学卒業後、システム開発に関わった後、人材業界で転職支援、企業向けキャリア開発支援などに幅広く関わる。複業、ワーケーションなど、時間や場所に捉われない働き方を自らも実践中。

国家資格キャリアコンサルタント/ プロティアン・キャリア協会広報アンバサダー / 人的資本経営リーダー認証者/ management3.0受講認定

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