入社7~10年目の女性総合職と直属上司の両方に働きかける研修で相互理解を促進

女性活躍推進には、女性だけでなく上司への働きかけも重要

当社で本格的にダイバーシティ推進が始まったのはダイバーシティ推進室が新設された2016年4月。女性活躍推進について議論する中で、まず取り組むべき課題と考えたのが、女性総合職のリテンションです。背景にはライフイベントが多くなりやすい30歳前後の女性総合職の離職率が男性総合職や一般職と比べて高いという問題がありました。
当社において女性総合職の新卒採用が定着し始めたのは十数年前。女性総合職の数は増えていますが、育児と両立する社員や、管理職はまだ少なく、若い世代が長期的なキャリアをイメージしにくいところがあります。また、当社の約半数を女性が占めておりますが、そのうち約9割が一般職。女性総合職はまだ少数であることから、女性総合職の役割やキャリアについて上司の理解が進んでいない面や、女性特有の不安(将来の育児等との両立)を持ちながら働いている現状が浮かび上がってきました。さらに、社内でのヒアリングから上司と業務以外のコミュニケーションがあまり取れていないと感じる女性総合職が少なくないこともわかりました。ライフイベントを越えて意欲的に働き続ける女性総合職を増やすには、女性自身の意識を高めるだけでなく、上司の意識改革を進めることや、上司・部下間の信頼関係を深めるための支援も重要。その手段の一つとして、上司と女性総合職双方に働きかけるような研修ができないかと考えていた時に、ライフワークスさんで上司と部下が一緒に研修を受ける「ペア研修」の実績があると知り、協力を依頼しました。

入社7年目から10年目の女性総合職全員を対象に実施

東京、大阪の2拠点で、直属上司とのペアで長期的なキャリアプランを考える「キャリアデザインワークショップ」を開催したのは2017年10月。入社7~10年目の女性総合職全員を対象としました。この年代を対象としたのは結婚・出産などプライベートの変化が起き、キャリアとの両立に悩みやすい時期であるとともに、ある程度の実績を積んでいるために上司とのコミュニケーションが希薄になりがちな時期だからです。実際、「お互い業務が忙しくてプライベートや今後のキャリアについてじっくり話す時間がない」「話してもきっと理解してもらえない」とあきらめている女性社員の姿も見られました。それだけに企画段階では「研修で上司と部下の考え方の違いがあからさまになり、逆効果になるのではないか」「本音で話し合うのは難しいのではないか」との懸念もあったのが正直なところです。しかし、当日は女性社員、上司ともに積極的にワークに取り組み、発言も活発でした。特にお互いの強みや持ち味、仕事の価値観を共有するワークは盛り上がり、信頼関係を深めたペアが多かったようです。「今後のキャリアについてじっくりと上司・部下間で話す機会が持てて、よかった」と好評で、研修によるコミュニケーション支援の意義を実感しました。

お互いの価値観や、感じ方の違いを知り、相互理解が進んだ

今回のプログラムにはケース研究とロールプレイングを通して女性のキャリアの課題とマネジメントの課題を考えるセッションも取り入れました。入社8年目の女性総合職「Aさん」のキャリア上の悩みを題材にしたもので、内容はライフワークスさんから提案いただきました。ロールプレイングの設定は「うちの会社でもありそう!」と感じられるリアリティがあり、実際に女性社員、上司ともに好評でした。特に上司層からの反響は大きく、「解決策を提示すること以上に相手を受け入れ、話を聴き、共感することが大事だと学んだ」「女性ならではの感じ方を知り、言葉がけのポイントがわかった」など自らの行動変容につながる気づきを得てくれたようです。男性上司と女性社員のコミュニケーションに問題が生じる原因として、性別による感じ方の違いもあるのは事実。お互いの違いを知り、相互理解が進んだのは、女性社員と上司が同じ課題に取り組む「ペア研修」ならではの効果だったと思います。
研修終了後、上司からは「自己肯定感が低い傾向にある女性が多く、しっかりと評価をフィードバックしていく必要があると感じた」、女性社員からは「上司が自分をよく見てくれていることがわかり、信頼感が増した」という声が寄せられました。研修を機に女性社員が上司に声をかけて食事に行ったという報告もあり、うれしく思っています。

プログラム概要

プログラム名 キャリアデザインワークショップ
日程 1日(7.5時間)
対象 管理職
女性総合職(入社7〜10年目)
※38ペア 76名 ※東京・大阪の2拠点で開催
プログラム概要
  • TOPメッセージ
  • 私のいいところ 仕事の価値観を探る
  • ケース研究(女性社員、上司がお互いの立場に立って視点や期待値を理解する)
  • これまでの仕事を振返り、自分の強みと成長テーマを確認する
  • これからのキャリアをプランニングする

アフターフォローで研修の効果を現場に生かす

今回の研修では、事後課題も設けました。プログラムの最後に書いたキャリアプランシートをもとに女性社員が行動計画書を作成して上司と面談し、上司がどのようなサポートをするかを記入した上で人事部に提出するというものです。ライフワークスさんから提案いただいたキャリアプランシートの枠組みが的を射たものだったため、この行動計画書も作成しやすかったようです。研修でキャリアビジョンを具体化・共有するだけではなく、時間を置いて改めて考え、決めた内容を上司や人事部に表明してそれを理解してもらう。一連のフォローでキャリア実現に向けた女性社員の「本気度」の高まりが見られました。ただし、組織では本人や上司の異動など環境変化もあり得ます。内容を次の部署や上司に引き継ぐなど今回立てた行動計画を周囲がサポートし続けられる仕組みを考えているところです。また、研修内容が「女性活躍」を前面に出したものではなく、部下のキャリアデザインを一緒に考えるというものだったため、上司にとっては、女性総合職以外にも応用できるマネジメントのヒントが数多くあったようです。今後は男性社員や一般職とその上司が、仕事への思いや価値観も含めたキャリアビジョンを共有できるような機会も設けていけたらと考えています。

この事例のまとめ

課題 ダイバーシティ推進の一環で、30歳前後の女性総合職の定着と活躍が課題に
女性総合職の役割やキャリアについて上司の理解が進んでいなかったり、女性が意欲を維持しにくい状況があり、30歳前後の女性総合職の離職率が男性総合職や一般職に比べて高めだった。
方法 入社7〜10年目の女性総合職と直属上司の「ペア研修」を実施
女性社員と上司それぞれの意識改革を進めたり、上司・部下間の信頼関係を深めるために、直属上司とのペアで女性総合職の長期的なキャリアプランを考える研修を実施。
成果 女性総合職と上司の相互理解が進み、女性社員のキャリア意識も高まった
女性総合職と上司の相互理解が進み、女性社員に対するサポート環境が向上。キャリア意識を高めた女性社員が多かった。また、キャリアをテーマにした研修だったことから、上司も部下一般に応用できるヒントを得られ、マネジメント力向上につながった。

取材日: 2017年11月24日

研修導入企業情報

三井住友カード株式会社 様

目的
管理職の育成力強化 女性の活躍推進
年代
20代 30代
業界
保険・金融

企業のご担当者様

人事部(東京)兼研修室 兼ダイバーシティ推進室 齋藤 綾 様(写真右)勝見 理紗子 様(写真左)

人事部(東京)兼研修室
兼ダイバーシティ推進室
齋藤 綾 様(写真右)
勝見 理紗子 様(写真左)

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