女性だけのプロジェクトチームで、いきいきと長く働き続けられる環境づくりを目指す

トップと現場の思いが一致して、環境改善チームがスタート

木下社長が就任してまず痛感されたのが、社内のコミュニケーション不足でした。そこで社長は全店長とのダイレクトミーティングを敢行。そのとき私が女性の活用と支援について要望を述べたのですが、逆に木下社長から女性のプロジェクト・環境改善チームのリーダーを命じられました。

実は、小売業では意外と女性の活用は進んでいません。弊社では、採用時は女性が全体の6割弱を占めているのに、10年後は逆転します。20代で退職に至る女性が多いのです。お客様の大半が女性であることから、女性の行動や意見が会社政策に反映する仕組みを作ること、また将来わが国の労働力不足が懸念される中、女性に長く働いてもらうことは弊社の大きな経営課題となっていました。一方、本社・店舗共に、近年女性従業員が疲弊していることに気づき、何とかしなければと感じていました。そうしたトップと現場の思いが一致したことが、プロジェクトの出発点となっています。

環境改善チームの目的は、女性が働きやすい環境づくり。そのため社内体制をどう作るのか、女性のモチベーションをどう向上させるか意見交換し、提案を行います。ただ、環境改善チームは組織ではありません。有志が業務を行いながら活動します。1期半年単位で、第1期は5名、第2期は社内公募で集めた10名で活動しています。ちなみに、売場改善チームは、その後顧客サービス室という組織になり、レジやサービスカウンターなどの改革を進めています。

女性だけで催事を企画したり、支援制度や研修を考える

環境改善チームのメンバー
環境改善チームのメンバー
第2期のメンバーは公募し、
レポートで選抜。意識の
高い人たちが集まって、
様々な活動に取り組んでいます。

環境改善チームは現在2グループに分かれています。一つのグループで進めているのが、新規の取り組みです。たとえば、店内の催事企画を女性だけで行うことも一つ。これまでは男性が企画して女性は指示に従うというパターンがほとんど。それを女性だけで考え、実行することで活性化を目指しています。ハロウィン企画やクリスマス企画・バレンタイン企画等、実際なかなか面白いものが出来そうです。

もう一つのグループで取り組んでいるのが、女性のための支援制度や研修の検討です。女性が長く働くためには、出産・育児に対するサポートが欠かせません。育児休業や育児短時間勤務を経験した人事部の女性担当者と一緒になって、実体験に伴った使いやすい仕組みを考え、復帰支援プログラムとしてまとめているところです。また、女性の交流の場を作るために、本社や店舗でランチミーティングを開いています。最初はグチ大会になるのではと危惧していたのですが、実際はお客様のことを考えた、前向きな意見がどんどん出てきました。これらの意見は、店長にも報告しています。なお、育休・育児は、職場全体の理解が大切です。そのため男性にも参加してもらっています。1回の参加人数は多くありませんが、地道に続けて社内に広げていくことが大切だと考えています。

長く働いてもらうための意識作りのために始めたのが、「キャリアを考える研修」です。ライフワークスさんの研修を採用したのは、仕事だけでなく結婚・出産・育児などプライベートとのバランスを考える内容だったこと。また、働く女性の心理についてよく考慮されており、不安や悩みの解決につながるものだったからです。さらに、女性講師が魅力的で、みんなの目標になることも理由でした。

仕事に復帰する女性や昇格試験合格者が増えることを期待

受講生の評価は高いですね。研修直後はもちろん、半年後に取った振り返りアンケートでも「仕事中の意識が変わった」「昇格試験を受ける決意ができた」といった声が寄せられています。「研修で相手の立場で物事を考える重要性を実感し、それをふだんの仕事に生かしている」という声も。現在この研修は、プロジェクトの一環として行っていますが、人事部で定例研修として提案したいと考えています。

現状では、出産や育児から復帰する女性は多くありません。プロジェクトの活動や研修によって、さらに、復帰支援プログラムを活用して戻ってくる人がもっと増えたり、10年後昇格試験にチャレンジする人や合格する人、女性管理職や役付者がトップ企業並みに出てくることと期待しています。

この事例のまとめ

課題 出産・育児などライフイベントの後、働き続ける女性が少ない
出産・育児などのライフイベントと仕事を両立している先輩が少なく、ロールモデルがいない、また忙しくて悩みを共有できる場がない、といったことが女性の退職率の高さに。働き続けることに不安を持つ女性のために、研修によって仕事と私生活のバランスを取って、いきいき働くためにどうすれば良いか考えるキッカケを提供。様々な気づきを得てもらいたいと考えました。
方法 同じ悩みを持つ仲間と楽しく意見交換し、多くの気づきを得る
これまでの研修は、講師が話をする一方通行のものがほとんど。それに対して、ライフワークスさんの研修はグループワークを中心とする参加型。各セッションを通して、自分らしさを考えたり強みや持ち味を整理したり、今後の目標や行動プランを考えるのですが、メンバーと意見や情報を交換することで、受講生は楽しみながら、たくさんの気づきを得ています。
成果 自分の人生に素直に向き合い、前向きな気持ちに
2009年度は20代後半を中心に全3回開催、約60名が受講しました。「本音で話せて、自分の人生に素直に向き合えた」「自分でマイナスだと思っていたことが、実はプラスだったと気づけた」と好評でした。2010年度は30〜35歳を対象に全4回開催予定。受講生にはマネジャー直前の方もいて、経験をもとに、より濃い意見交換が行われています。

※2009年7月に発足した、環境改善チーム・プロジェクトリーダー・田村博子様をはじめ、メンバー・長谷川郁恵様、日比野史美様からお話を伺いました。ご担当者の所属などは2010年9月現在のものを掲載しています。

取材日: 2010年9月

研修導入企業情報

株式会社東急ストア 様

目的
女性の活躍推進
年代
20代
業界
流通・小売

企業のご担当者様

環境改善チーム プロジェクトリーダー 田村 博子 様

環境改善チーム
プロジェクトリーダー
田村 博子 様

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