身近に目標がいない若手の女性総合職と運航乗務員の、キャリアプランづくりを支援

身近なロールモデルがいない不安

潮田氏:当社の女性社員比率は約50%ですが、その多くは客室乗務員や空港の旅客係員です。総合職事務職は約12%、技術職(整備職)は約1.8%、運航乗務員は1%未満で、しかも20代から30代前半に偏っています。また、母数が少ないため、ロールモデルとなる、5年〜10年上の先輩たちが身近にいません。彼女たちは、結婚や出産などのライフイベントを控えている世代であり、「数年後のキャリアイメージを描きにくい」「仕事と家庭との両立に悩むのではないか」といった悩みや不安がアンケートで寄せられていました。女性の総合職を対象とした研修は2008年度から実施し、社内でいきいきと働く、女性の多様なロールモデルを紹介しているのですが、今回、彼女たちの不安を払拭し、自分のキャリアプランやライフプランを長期的な視点で考えてもらうために、初めてライフワークスさんの協力を得て、キャリアアップセミナーを実施しました。今回の研修には、キャリア作りのモチベーションを高め、長くいきいき働き続けて欲しいという思いが込められています。

自分の持ち味や強み、やってきたことの確認から自ずと行動プランが

柿沼氏:今回ライフワークスさんの研修を導入する大きなキッカケとなったのは、私自身がトライアルで研修を受講する機会があり、女性講師の方の話に感銘を受けたことです。特に他の部署や社外の人と接する機会が少ない整備職や運航乗務員の女性社員に、ぜひこの素敵な講師の話に触れて欲しいと思いました。研修でも最初に講師の方がご自身の経験をオープンに語っていただき、受講者の刺激になったと思います。

潮田氏:研修は1泊2日でしたが、1日目の冒頭にセミナーの背景や目的についてデータを使ってきちんと説明しました。その後、さまざまなツールを使って、自分らしさを知りキャリアを振り返る活動を実施。また、3人の先輩に来てもらい、生き方や働き方を学ぶ機会を設けました。2日目は自分の働く上で大切にしていることを踏まえて、事例研究でキャリア上の課題を考えて、最後にキャリアデザインシートに、ワークとライフについての今後の目標や行動プランをまとめてもらいました。

柿沼氏:私自身が受講した経験から言えば、自分の夢や強み、これまでの人生の振り返りをキャリアデザインシートに落とし込むことで、今までやってきたことが見え、整理することができました。それが自然と、これからの人生を考えたり、具体的な今後のアクションプランにつなげられました。受講者のアンケートからも「自分を見直し、目標設定ができた」「(仲間からや上司からの手紙など)具体的なアドバイスが多く、実践できそう」といった、手応えを感じるコメントが数多く寄せられました。

楽しみながら、自分のキャリアプランを考えてもらえた

柿沼氏:こうしたマインドアップの研修は、受けて楽しかったと実感してもらうことが大切です。そのためテーブルにお菓子を用意するなど、リラックスして自己開示ができるようにしました。実際お菓子の消費量がすごくて(笑)。皆さん笑顔で楽しみながら進めて、自分のキャリアプランやライフプランを考えてもらえたのは、良かったと思います。

潮田氏:初めての研修内容でしたが、受講者から高い評価をいただくことができました。女性だけの研修ということで、ホンネの意見が飛び交い、受講者同士いろいろな思いを共有できたようです。研修の成果はすぐ出るものではありませんが、3~4年たって今回の受講者から、次の世代のロールモデルになる方々が出てくることを期待しています。

※全日本空輸(株)人事部いきいき推進室について
ANAグループで働く全ての社員が「いきいき」と働くための制度・環境づくりを目的に、2007年に設置された。女性・シニア・外国人など社内におけるダイバーシティ(多様性)の理解促進と人材の活用を目指し、女性をはじめとした多様な人材のキャリア支援と活躍支援、「仕事」と「家庭」の両立支援整備、多様性を受容する意識と風土の醸成(ワーク・ライフ・バランスの推進)などを行っている。

この事例のまとめ

課題 不安を払拭し、キャリアを切り開くモチベーションをアップしてほしい
女性の総合職と運航乗務員は20代~30代前半が多く、身近にロールモデルがいなくて、ワーク・ライフ・バランスやキャリア形成に大きな不安を抱えていました。その不安を払拭し、自分らしいキャリアを切り開くためのモチベーションを高めてもらうことが課題でした。
方法 自由な雰囲気の中、自分らしさを確認し今後のキャリアを考える機会に
1日目は、グループワークで自分の強みや持ち味の確認や、これまでの人生や仕事生活を整理。先輩の話からその生き方や働き方を学びました。2日目は、働く上で大切にしたいことの確認や事例研究の後、今後の生き方や働き方について言葉にし、各自がキャリアデザインシートを作成しました。みんながリラックスして発言。上司の手紙や仲間の助言も得て、今後の生活を充実させるための良い機会になったようです。
成果 受講者の95%が高く評価。一方で男性社員や上司の意識改革の必要も感じる
アンケートでは95%が「参加して良かった」また同じく95%が「これからの生活を充実させるキッカケになった」と、高い評価を得られました。今後も同様の研修を続けたいと考えています。意外だったのが、女性社員にも多様な価値観が広がっていること。「結婚せずバリバリ働いている人の話も聞きたかった」といった声もあるなど、今後どう対応していくか課題になりそうです。一方で、男性社員や上司の意識改革も必要だと感じました。

pict_kuyu03.jpg

※ご担当者の所属、役職などは2010年7月現在のものを掲載しています。

取材日: 2010年7月

研修導入企業情報

全日本空輸株式会社 様

目的
女性の活躍推進
年代
20代 30代
業界
インフラ・運輸

企業のご担当者様

人事部 いきいき推進室 室長 潮田 敏明 様

人事部 いきいき推進室
室長
潮田 敏明 様

全日本空輸株式会社様 人事部 いきいき推進室 コーディネーター 柿沼 郁子 様

全日本空輸株式会社様
人事部 いきいき推進室
コーディネーター
柿沼 郁子 様

この事例をシェアする

ご相談・お問い合わせメルマガ登録他の事例も見る

この事例を見た人は、
こんな事例も見ています