50歳の社員向けに社内外の環境変化理解を促し、キャリア自律意識を醸成

社員年齢構成の変化、ポスト・オフ、年功的処遇の崩壊にどう対応するか

当社の場合、現在の社員の年齢構成はピラミッド型をしています。ただ、20代後半から30代の半ばの社員がもっとも多く、バブル期に入社した40代半ばにも山があります。今は良くても5~10年先には、"ドラム缶形化"が進む見込みです。また、組織のフラット化に伴い、役職につかないミドル・シニア社員が増えていきます。一方、社外では、日本全体の人口動態の変化や、ビジネスのグローバル化、日本市場の成熟化の中で、求められる人材も変わってきています。年功的処遇が崩れ、多くの会社で成果主義などの人事制度が取り入れられましたが、うまく機能していないように思われます。さらには、企業に対して65歳まで雇用を義務化する動きもあり、定年後も働き続ける人が増えるでしょう。

こうした社内外の大きな環境変化に、ミドル・シニア社員はどう対応すれば良いのか?漠然とした不安を持ちつつも、普段突き詰めて考えている方は多くありません。50歳の方が65歳まで働くとしたらあと15年、会社に貢献し続けるには、どんな働き方が必要か、自らよく考えて行動していただくことが大切です。会社にとって、もっとも困るのが "会社にぶら下がられる"こと。そうならないように人事管理部門としても取り組むべきことはたくさんありますが、研修も大切な柱の1つです。そこで、50代からのキャリアを考えるきっかけにしていただこうと、1泊2日の「キャリア&ライフデザイン研修」を導入。50歳社員全員に受けてもらうことにしました。

社長が直接期待をメッセージ。さらに数字で実状を伝え、意識を高める

導入にあたって数社にプレゼンをお願いしました。提案を受けた内容を大きく分けると、社外に目を向けてもらうための研修と、社内でのキャリア開発のための研修がありました。当社としては、今後も社員に、オリックスグループ内で活躍してもらうことを第一義と考えています。ライフワークスさんに決めたのは、その意向に合致しており、キャリアデザイン、マネープラン、ライフデザインといったプログラムのバランスが取れていたこと、そして、講師の方のキャラクターが当社に合っていたからです。

研修の大きな目的は2つあります。社内外の環境変化を理解してもらうことと、自分のキャリアを振り返りつつ、今後の働き方や貢献の仕方を考えてもらうことです。経営陣もこの研修に期待しており、研修の冒頭で、毎回社長自ら登壇し、講話をしています。そのメッセージは、「50代はまだ若い、老け込むな」「実務から離れず、自ら動け」「挑戦しろ!」と。口調は多少荒っぽいのですが、トップの熱い思いと期待の大きさが社員の心に刺さっているようです。「オリックスの現状と環境変化」というセッションでは、社員の年齢構成や管理職数の変化などを数字で具体的に示し、報酬制度の運用状況などもデータで伝えるため、納得感があるようです。その後で、自分の価値観を探り、自分史を振り返って、強み、持ち味を確認し、今後のキャリアビジョンを描いて、目標と行動計画を立ててもらいます。

経営陣の意向で組み入れたセッションが、「50代社員のこれからの活躍を語り合う」です。環境変化を踏まえた上で、自分たちに何ができるかを忌憚なく話し合い、会社に対する要望も出してもらいます。毎回前向きな議論がなされ、たとえば「50代チームを編成し、グループ外まで活動を広げてはどうか」など建設的な提案が数多く出されています。議論は夕食後の懇親会でも続きます。懇親会は外出OKで門限なし(笑)。久しぶりに同期が集まることもあり、貴重な意見交換の場になっているようです。

自分の強みや持ち味を改めて確認。漠然とした不安を具体的な課題に

この研修が、漠とした将来への不安を具体的な課題として考える、良いきっかけになっています。自分の強みや持ち味の再発見もでき、事業計画を立てる構想力や企業の財務内容を診る力、お客様や部下とのコミュニケーション力など、30年近く働いてきた中で身につけた専門性に改めて気づいています。

これまで5回実施していますが、一定の成果を実感しています。ただ、50代社員が本当にイキイキと貢献し続けられる会社になるには、研修だけでは実現できません。課題は山積しています。次のステップの1つは、会社として50代の社員にどんな仕事を提供できるかです。そのためには、グループ内外で職務開発を行い、人材をマッチングさせる必要があります。

すでに2名がキャリア&ライフデザイン支援担当になって、個別カウンセリングも始めています。今後は、求められる職能を満たすためのスキル研修も必要になるでしょう。「キャリア&ライフデザイン研修」に、職務開発やマッチング、個別相談、職能研修をうまくリンクさせることで、50代からも社員がイキイキと働けるような、先進的な会社にしたいと考えています。

この事例のまとめ

課題 年齢ピラミッドの変化に対応。50代社員のキャリア自立を促す
50代社員の比率が高まり、"ピラミッド型"の年齢構成が崩れつつあります。ポストが減り、年功的処遇も崩れる中で、50代からもイキイキと働き続けて欲しいというのが経営陣の思い。今後のキャリアを改めて自ら考えてもらう必要がありました。
方法 研修を通じて現状を認識し、危機意識を持ってキャリアビジョンを描いてもらう
50歳社員全員を対象に「キャリア&ライフデザイン研修」を導入することにしました。研修の中で社長が直接期待を伝えたり、社内外の環境変化を数字で具体的に示すことで、現状認識が深まり、危機意識も高まっています。そして、自分のキャリアや価値観、強みを振り返り、これからの活躍に向けたキャリアビジョンを積極的に描いています。
成果 各自の認識が深まる。グループ内外での職務開発とマッチングが課題
参加者はそれぞれ自分の専門性を再発見して、50代のこれからの活躍について前向きに議論し、最後には「自分の仕事は自ら作る」「チャレンジが必要」「学ぶクセをつける」といった決意表明をしています。研修が、どのように働くかを考える良いきっかけになっていると感じています。今後は、グループ内外での職務開発やマッチングが重要です。

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※ご担当者の所属などは2012年1月現在のものを掲載しています。

取材日: 2012年1月

研修導入企業情報

オリックス株式会社 様

目的
ミドル・シニアの活性化
年代
50代
業界
保険・金融

企業のご担当者様

人事部人材開発チーム チーム長 長谷川 岳雄 様

人事部人材開発チーム
チーム長
長谷川 岳雄 様

オリックス株式会社 人事部人材開発チーム 課長 小俣 和比虎 様

オリックス株式会社
人事部人材開発チーム
課長
小俣 和比虎 様

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