「入社2年目社員向けキャリア研修」でリテンションを図る
自社での長いキャリア形成を考える場を早い時期に
厚生労働省の1987年からの調査によると、新入社員の約3割が3年以内に退職する傾向が続いています。当社の場合、入社3年以内の離職率は約3割強。一方で社員の高齢化が進んでおり、若手社員の定着が大きな経営課題となっています。
若手社員の離職防止(リテンション)を図るために、まず打つべき手は何か。最初に検討したのは、20代の女性社員を対象としたキャリア研修の実施でした。当社の新入社員に占める女性の割合は64%と高いのですが、管理職に占める割合は4%(2015年度)。また、結婚や出産後に仕事を続けている女性社員の比率も高いとは言えません。会社の期待やワークライフバランス向上のための取り組みを伝えて「長く働ける会社なんだ」と思ってもらえるような研修を実施し、女性の活躍を後押しすれば、離職の歯止めにもなると考えたのです。しかし、検討を重ねたところ、20代半ばまでの離職率には性別による差がなく、当社での長いキャリア形成を考える場を早い時期に提供する必要性は男女ともにあると判断。2016年度から、これまで業務知識の習得が中心だった2泊3日の入社2年目研修の中日に、キャリア研修を実施することに決めました。
研修の対象を入社2年目の社員としたのは理由があります。当社では入社3年目の終わりに主任試験が行われ、主任に昇格した社員の就業意欲は高くなる傾向が見られます。まずはそこまで社員のモチベーションを維持するには、先輩からのフォローが新入社員時代に比べて手薄くなりがちな入社2年目に実施するのがベストなタイミングだと考えました。
前向きに働き続けるための心理的な土台づくりからスタート
研修プログラムの企画はライフワークスさんにお任せしましたが、重視したのは前向きに働き続けるための心理的な土台づくり。研修の最初には人事部長が話をし、会社から若手社員への期待を伝えるために、出産・育児休暇制度、時短勤務制度、資格取得支援制度など制度の説明を丁寧に行いました。長く活躍してもらうための支援が整っていることを知り、安心感を持ってもらいたかったからです。また、事前に受講者の強み・持ち味を評価するシートを上司に提出してもらい、周囲からの期待を知ってもらう工夫をしました。
身近なロールモデルから自分の将来像をイメージしてもらうために、先輩社員に自分の職務内容や仕事のやりがいを語ってもらうセクションも設けました。育児をしながら活躍している女性社員、海外旅行関連の部署で意欲的に働いている女性社員、修学旅行など学校関連の部署で企画を担当している男性社員、内勤で手配業務を担当している男性社員の4名が登壇。社内に幅広い分野の仕事があることや、いろいろな働き方があることを伝えられるようにと人選に苦労しましたが、「先輩の姿を見て、自分も頑張ろうと思った」「他部署の仕事にも興味を持てた。もっと詳しく聞きたい」と受講者から大変好評でした。
プログラムの概要
プログラム名 | 入社2年目向けキャリア研修 |
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日程 | 8時間 (2泊3日の若手社員研修の2日目に開催) |
対象 | 入社2年目の社員(約80名) |
プログラム概要 |
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グループワークを通じて、同期の絆が生まれる効果も
当社の拠点は全国各地にあり、研修は普段は会えない同期との交流の場でもあります。気軽に相談できたり、助け合える同期の存在は心強いもの。リテンション要因のひとつでもあると考え、絆を深めてもらえるようにとプログラムにはグループワークも多く取り入れました。例えば、今後の働き方を語り合うグループディスカッション。研修の最後に、各自が作成したキャリアプランシートをみんなで共有し、アドバイスや励ましを交換し合いました。目標が明確になるだけでなく、仲間意識が生まれ、「グループワークを通じて同期とじっくり話せて良かった」「仕事の悩みを共有できた」と受講者から高評価でした。
今回の研修プログラムは「会社からの期待と支援を伝える」「仲間との絆づくり」「長期的視野でのキャリア計画の立て方を知る」といった多面的からのアプローチで受講者に自社での長期的なキャリア形成をイメージさせる内容になっており、満足しています。キャリア計画というのは思い通りに行くとは限りませんが、入社後の早い時期に「ずっとこの会社でやっていける」という見通しを持てれば、仕事への姿勢やパフォーマンスも変わります。アンケートによる受講者満足度も高く、今後も「入社2年目向けキャリア研修」は継続していく予定です。
研修実施が会社や上司の「気づき」につながった
今回の研修は約80名が一堂に会する研修だったため、ライフワークスさんからのご提案で、メイン講師のほかにサブ講師3名の体制で運営していただきました。サブ講師の方々にはグループワークの際に進行を促していただいたり、受講者の精神的なサポートなど細かいフォローをしていただき、とても助かりました。
グループワークには人事スタッフも一部立ち合い、受講者の話を聞く中で、若手社員の行動や思考の傾向や、仕事の何に悩んだり、つまづきを感じているのかが以前より見えてきました。若手社員と40代、50代のマネジメント層では社会に出る前に受けてきた教育が違うので、「自分が若手社員時代はこうだった」という感覚で部下や後輩を指導すると、彼らの悩みが解消されないこともあります。研修を通してわかった若手社員サポートのポイントを現場にもフィードバックしていければと考えています。また、研修のために部下の評価シートを作成することが上司にとっても部下の強みや持ち味に気づく機会になったようです。
人材育成に「即効薬」はなく、研修の効果が出るまでには時間が必要です。しかし、研修の実施そのものを会社からの応援メッセージとして受け取った受講者は多く、手ごたえを感じています。今後はPDCAを重ねて内容を練り、若手社員が「この会社でずっと働きたい」と思えるような研修を実施していきたいです。
この事例のまとめ
課題 | 若手社員の離職が多く、リテンションが大きな課題に 毎年100名単位で新卒採用を行っているが、入社3年以内に約3.5割が退職。社員の高齢化も進んでおり、若手社員の定着が大きな経営課題になっていた。 |
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方法 | 2年目社員向けキャリア研修を実施し、長期的なキャリア形成のイメージを醸成 「会社からの期待と支援を伝える」「仲間との絆づくり」「長期的視野でのキャリア計画の立て方を知る」といった多面的な内容の研修を実施。 |
成果 | 前向きに働き続けるための心理的土台づくりができた キャリアの見通しを持てたり、同期との絆を深めることにより、若手社員が前向きに働き続けるための心理的土台づくりができた。また、研修の実施は、会社や上司が若手社員を理解するきっかけにもなった。 |
取材日: 2017年5月23日
研修導入企業情報
東武トップツアーズ株式会社 様
- 目的
- 若手の成長支援・リテンション
- 年代
- 20代
- 業界
- サービス
企業のご担当者様
東武トップツアーズ株式会社
人事総務部 能力開発室長山科 ほとり 様