上司と協働し、定年前社員のキャリア自律意識と職場への貢献意欲を高める施策を実施

再雇用を見据えて、定年前社員のキャリア自律意識や職場への貢献意欲を高めたい

57歳から3年間の評価や資格保有数などにより、60歳からの再雇用時の処遇が決まるJ社。今後、再雇用を希望する社員が増えていくことが予測される一方で、定年前社員の多くは、57歳から3年間の評価で再雇用時の処遇が決まるという認識が薄く、仕事や職場への貢献意識が低い状況でした。再雇用を選ぶのであれば、57歳からの3年間はもちろん、60歳以降も前向きに仕事に取り組み、職場に貢献してほしい、そのためにモチベーションを高める研修を行いたい、と考えた人事部門から、ライフワークスにご相談いただきました。

J社からのご相談を受け、研修を行うこと自体は重要で必要なことですが、研修のときだけ意識が高まり、その後は持続せずに終わってしまっては、会社が重視する「定年前3年間の頑張り」には結びつかないであろうこと、また、研修後、職場に戻っても高い意識を持ち続け、日々の仕事への取り組み方も前向きに変化し、それが続くことが本質的な課題解決になることから、57歳向け研修という「点」だけでなく、プラスアルファの施策を加えた「線」でキャリア自律意識や職場貢献意欲を高める取り組みを提案しました。

シニア社員の行動要件を定め、上司と協働して実現をめざす

具体的に提案し、採用いただいたのは、次の2つの施策です。

1つめは、上司を巻き込むこと。57歳向け研修のあとに受講した社員とその上司とで面談を行い、社員が研修で作成したキャリアプランシートをもとに持ち味の発揮の仕方を話し合うとともに、上司から社員に対して、職場で期待する役割を伝えてもらう場を設けました。さらに、57歳研修と面談の目的や面談の進め方、観点などをまとめた上司向けの「ガイドブック」を作成し、上司を対象にした研修を行わずとも、中を読めば適切な面談ができるようサポートしました。

2つめは、「シニア社員として発揮してほしい行動」として6項目の行動要件を定め、57歳研修で伝えるとともに、上司には研修前と研修3カ月後に各項目について5段階で評価してもらい、その結果を集計して定量化し、意識や行動の変容状況を検証するという仕組みの構築です。

6項目は、例えば、「自分に対する期待を自ら主体的に上長に確認している」「周囲の状況を把握し、他のメンバーへの相談や支援などの協力を惜しまず実施している」など、ライフワークスがこれまで積み重ねてきたシニア向けの研修や活躍するシニア社員に対するインタビューなどから得られ、蓄積してきた、シニア社員が組織内での自らの役割を認識し、その役割に対してモチベーション高く組織貢献するときの行動特徴を言語化しました。

研修から3カ月後の評価において、57歳社員の行動変容が見られた

これらの取り組みの結果、研修3カ月後に実施した行動要件6項目についての評価スコアが、研修前のスコアに比べて各項目ともおおむね上がり、研修や面談での意識づけの効果が見て取れました。「上司や同僚とうまくコミュニケーションをとって頑張って」といった抽象的な助言ではなく、具体的な行動要件に落とし込んだことで、57歳社員には「ここまで意識してやることが求められているんだな」と認識していただけましたし、上司もシニア社員に期待する行動として「このような行動を意識してお願いしたり、指導したりすればいいんだ」ということが理解でき、共通言語のもとで互いにできる・できていないという会話ができるようになったのは、少なからず職場の運営上の助けになったのではないかと分析しています。

また、面談のハンドブックに対して「研修の全体像が理解でき、社員への動機づけをスムーズに実施することができた」「研修受講前、受講後における受講者への声がけ内容について、何を伝えるべきか具体的で理解しやすかった」など、上司から好意的な評価を多数いただき、適切な面談を行うサポートができたと感じています。

今後の課題としては、6項目のスコアについて、全体の平均をとると研修前と研修3カ月後でどの項目もおおむね上がっていますが、1人ひとりのスコアの変化を見ると、まったく変化がない人もいるので、研修や面談、行動要件による意識づけだけでなく、シニア社員が具体的な行動に移せるようなるところまで踏み込んだ施策の必要性を感じています。この課題についてどのような取り組みができるか、現在J社の人事部門と検討中です。

この事例のまとめ

課題 定年前社員のキャリア自律意識や職場への貢献意欲を高めたい
57歳から3年間の評価が再雇用時の処遇に反映される仕組みの中、再雇用を希望するであろう定年前社員のモチベーションを高め、57歳からの3年間はもちろん、60歳以降も前向きに仕事に取り組み、職場に貢献してもらいたい。
方法 研修にとどまらない「線」でキャリア自律意識や職場貢献意欲を高める取り組みを実施
57歳向け研修に加え、上司と57歳社員との面談、シニア社員に発揮してほしい行動要件の策定と評価の仕組みを構築。研修という「点」ではなく、「線」でキャリア自律意識や職場貢献意欲を高める取り組みを行った。
成果 研修後、57歳社員に行動変容が見られた
研修から3カ月後に実施した、シニア社員の行動要件ごとの5段階評価のスコアが、研修前に比べて概ね上昇し、研修や面談による意識づけの効果が見られた。

研修導入企業情報

サービス J社

目的
ミドル・シニアの活性化 管理職の育成力強化
年代
50代
業界
情報通信

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