豊富な経験・技術を持つシニア人材の活躍は
事業の成長戦略実現に不可欠。
キャリア研修を活用し、活躍を促進

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この事例のまとめ

課題 2003年に定年年齢を65歳に延長したが、役職定年や60歳での賃金体系変更の影響でシニア社員のモチベーション維持が難しいという課題があった。一方で社員の年齢構成の偏りや人材不足などの背景から、豊富な経験・技術・知見を持つシニア社員の活躍を支援する必要性が高まっていた。
方法 シニア社員の活躍を支援するための制度(ハード)の土台として、全般的な賃金体系の改定を行い、併せて、後進育成を担う職を新設し、シニア社員の役割を明確化した。そして、改定された制度をより効果的に機能させるための施策として『50歳/59歳キャリア研修』を実施した。
成果

「50歳/59歳キャリア研修」において、会社からのシニア社員への期待を伝え、自身の内的キャリアを再確認し、自己効力感を高めて今後の価値発揮を考える機会を提供できた。研修後のアンケートにも「自分のキャリアや強みの棚卸しができた」といった声が寄せられ、処遇改善・職種新設等の施策との相乗効果が期待されている。

これらの取り組みにより、シニア社員が自身のキャリアを主体的に見つめ直し、今後の価値発揮に向けた意欲を高める契機となった。研修を通じた内的キャリアの再確認と制度改定による環境整備が相乗的に作用することで、シニア層の活躍促進に向けた土壌が整いつつある。

100年に一度といわれる一大プロジェクト、渋谷駅を中心とした大規模再開発を手掛けるなど、「都市機能を止めない技術」への注目が高まる東急建設株式会社。2021年度にスタートした「長期経営計画 VISION2030」のもと、人事制度の改革や人材育成への投資を加速されています。そのテーマの一つ「シニア人材の活躍支援」について、多様な観点からのお取り組みをうかがいました。

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2003年に定年を65歳に延長し、安心して長く活躍できる環境を提供

東急建設株式会社 管理本部 人事部 採用・育成グループ 和田 洋 様

東急建設では、2003年に定年年齢を従来の60歳から65歳に延長しました。65歳までの雇用確保が完全義務化されたのは2025年4月(※1)ですが、それに20年以上先立つ決定です。当時の東急建設はバブル崩壊後の経営再生に向けて動き出していた時期。さまざまな人事施策を実施するなかで重視したことの一つが、雇用の安定でした。そこで、65歳までの雇用を確保すること、それも「再雇用」ではなく「定年延長」とする制度設計としたのです。

(※1)※2025年4月より高年齢者雇用安定法の改正により、企業には「65歳までの雇用確保」が完全に義務付けられました。定年を65歳に引き上げるか、定年制を廃止するか、または希望者全員を対象とした継続雇用制度の導入が必要とされています。

「長期経営計画 VISION2030」においても、その実現にシニア社員の活躍は不可欠です。本業である国内土木・建築・建築リニューアル事業を「コア事業」、国際・不動産・新規事業を「戦略事業」と位置づけていますが、「コア事業」においてはシニア社員が長年培ってきた経験や技術・知見は大切な財産。また、30代後半から40代にかけての社員が少ないという年齢構成上の課題もあり、シニア社員の活躍なしでは事業が成り立ちません。

ただ、従来の制度では60歳で「専任職」という職種に転換し、賃金体系が変わる仕組みになっていました。また、役職者も60歳までに役職定年を迎えることになり、そうした変化がモチベーションに少なからず影響するという課題がありました。

研修制度、処遇改善、職種新設。シニア社員の活躍を多面的に支援

そこで、まず企画したのが59歳向けのライフプラン研修でした。60歳での賃金体系変更に備えるための、退職金制度や資産運用といったマネーに関する研修です。ただ、マネーは大切な問題ではあるものの、やはりそれだけではモチベーション向上につながらない。そこで、2019年から「キャリア」もテーマに取り入れるようプログラムを改訂しました。すると受講者から「もっと早く受講したかった、59歳では遅すぎる」という声があがり、59歳時に加えて「50歳キャリア研修」を導入することになったのです。

「VISION2030」のもとで実施する人事制度改革のなかで、シニア社員の処遇も大きく改善しました。60歳以上の社員に適用していた「専任職」を2022年に廃止しました。また、社内の賃金体系を変更したことに伴い、60歳以上の社員に対する処遇も改善しました。

もちろん、処遇改善はシニア社員だけでなく、新卒初任給の見直し等をはじめとする全社的な取り組みです。人材はデジタル技術と並んで競争優位の源泉の2本柱に据える大切な資本。そのための施策はコストではなく投資と捉え、「人材への投資」を加速化させている最中です。

並行して取り組んだのが、「シニア社員の役割の明確化」です。専任職に代わる職種として、2023年以降、後進を育成する担う職種を新設しました。自身の経験や技術、知見、ノウハウ等を後進に継承し、若手を育成する役割を明確に位置付けた職種です。

キャリア研修で自身の強みや内的キャリアを確認し、活躍のイメージを具体化

東急建設株式会社 管理本部 人事部 採用・育成グループ 春本 ふゆみ 様

ライフワークス社には、2020年度から「50歳/59歳キャリア研修」を実施いただいています。ライフワークス社主催のセミナーに当社の人事担当者が参加し、その後のディカッションを通じて同社のコンセプトに賛同したのがきっかけでした。今年で導入5年目になりますが、50歳・59歳いずれも対象者への会社の期待、それを受けた研修の位置づけを汲み取っていただき、ニーズに合わせた最適なプログラムを組んでいただいております。

「50歳キャリア研修」の目的は、「環境変化に対応し、これからの社内キャリア構築を考える」です。土木・建築業界の環境変化は著しく、技術は日々進化しています。50代は"これからも現役"であり続ける世代であり、定年までの15年間、組織のトップランナーとして活躍が期待されます。役職といった外的キャリアではなく、自分の内的なキャリアを見つめ直すことで、『社内における自分の強みや持ち味を活かした貢献とは何か』を再定義し、意欲とやりがいをもってキャリアを歩んでいただきたいと考えています。

「59歳キャリア研修」については、「周囲の期待や自分のキャリア資産を正しく認識し、今後の新たな価値発揮の方法を検討する」ことを目的に置いています。職場での役割が変わる方や、賃金体系変更の影響で、モチベーションの低下が懸念される世代。会社からの期待を知り、これまで積み重ねてきたことを棚卸しすることによって「自己効力感」を高め、今後の新たな役割を考えてもらうためのプログラムです。

キャリア研修の資料をダウンロード

いずれもオンラインの一日研修で、技術系職や事務系職、新卒入社者やキャリア採用者など、あえて多様な社員が同じグループになるように設定しています。受講者から積極的な発言が出るか心配していましたが、研修トレーナーの方に受講者の言葉をうまく引き出していただきました。受講者同士が期待以上に活発に意見を交わし、互いに自己開示が進み、気づきの多い場になったようです。

研修では、参加者がこれまで「当然」だと捉えてきたことの価値を再発見する機会が生まれています。例えば「建物を完成させるのは当たり前」だった技術系の社員が「それは当たり前ではなく、素晴らしい実績」と、日頃は交流する機会のない他部署の社員から承認されることで、自らの仕事の真価に気づくといった内省が促されています。また、受講者それぞれの「人生の振り返り」を共有し、「こんなキャリアの築き方もあるのか」と新たな視点を得る機会にもなっているようです。お互いに気づき学び合うように進行されるプログラムを通じて、自信につながった受講者も多いようです。

研修後のアンケートにも、「自分のキャリアや強みの棚卸しができた」「他部署の同世代社員との意見交換による新たな気づきがあった」「今後の目標や行動の見直しができた」といった声が寄せられています。自己理解の深化や、将来への意識の向上といった変化が起きているのではと期待しているところです。

また、当社では60歳以降の賃金体系変更を踏まえ、59歳時点で上司との面談を実施する制度を設けています。シニア社員本人にとっては、今後の働き方や役割を見据え、上司と方向性を確認する重要な機会です。

しかし、従来の運用では、面談のタイミングがキャリア研修よりも先に設定されていたため、いくつかの課題が生じていました。具体的には、上司が面談時点で本人の意向を十分に把握できず、本人も自身のキャリアについて考えがまとまっていない状態で臨むケースが多く、結果として上司から期待を一方的に伝えるだけの面談になってしまうこともありました。

こうした課題を受け、2025年度より「59歳キャリア研修」の後に面談を行う運用へと変更しました。研修後には本人が作成した報告レポートが上司に共有されるため、上司は本人の考えや希望を踏まえたうえで面談に臨むことができます。本人も、自身の今後の活躍イメージを具体的に伝えやすくなり、双方にとってより充実した対話の場となっております。

シニア社員に「今後のキャリアを考える機会」を提供することの大切さ

社員の年齢構成の偏りや人材不足といった問題は、当社だけでなく多くの業界・企業に共通する課題ではないでしょうか。そうした状況下で、シニア社員の経験や知見は組織にとって大きな財産になります。その反面、シニア社員は、定年が近づくにつれて役職や処遇が変化し、モチベーションを維持することが難しくなるという問題にも直面しています。

以上の問題に対して、「シニア社員に会社からの期待を伝えること」「やりがいや今後も自分らしく働くためのヒントを発見する機会を提供すること」は、重要なことだと考えています。これを実現する手段として、ミドルシニア層のキャリア研修をライフワークス社に依頼し、現在も継続的に実施しています。この取り組みは、会社と社員本人の双方にとって、有効な施策として機能していると捉えています。
今後も、シニア社員が自らの経験と知見を活かし、前向きに働き続けられる環境を整えていくことで、事業の成長戦略を支える原動力としていきたいです。

ご担当者様:
東急建設株式会社
管理本部 人事部 採用・育成グループ
グループリーダー 和田 洋 様
担当者 A 様

研修導入企業情報

東急建設株式会社

目的
ミドル・シニアの活性化
年代
50代
業界
その他

営業担当者の声

金丸 紘子

担当者:金丸 紘子

東急建設様とは、導入時から研修を実施するだけでなく「いかに対象者に届く施策にするか」を軸に、毎年ディスカッションを重ねてブラッシュアップしてまいりました。
特に制度変更以降は、研修冒頭の開講挨拶についても、受講者の当事者意識が高まる発信とは何かを事務局の皆さまと丁寧に検討してきました。現在は、人手不足問題を人事としても受け止め、改善に向けて尽力しているものの難しい実態を率直に共有し、協力を仰ぐスタンスで発信いただいています。

研修導入当初は、厳しい環境要因を理由に、個人の行動に限界を感じる声も一部ありましたが、直近では受講者の皆さまから「この状況下で自分たちがどうするのが最善か」といった建設的な会話が多くみられるようになってきました。
この5年間で受講者の受け止め方が大きく変化していることは、共に取り組んできた成果の一つだと感じています。
今後も「前向きに受け止めてもらうには」「行動に結びつけるには」を共通の視点とし、研修と前後施策を一体で捉えながら、進化に寄り添い続けたいと考えています。

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